建設業の資金繰りを改善するには?業界特有の課題や具体的な対策
資金繰りは企業にとって重要な取り組みであり、悪化させないよう日々の徹底した対策が必要です。しかし、さまざまな業種の企業が存在する中で、特に建設業においては業界特有の特徴や課題があり、資金繰りが難しいとされています。実際に建設会社を経営しており、資金繰りに悩みを抱えている経営者も多いのではないでしょうか。
この記事では、建設業の資金繰りの課題や具体的な対策、資金調達方法などを解説します。
1 建設業の資金繰りの特徴と課題

建設業の資金繰りにおいては、以下のような業界特有の特徴と課題があるため、中小企業の経営者は十分に理解しておく必要があります。
- 先行支払いが多い
- 入金されるまでの期間が長い
- 工期延長が発生する場合がある
- 現場ごとの入出金状況に対応する必要がある
- 季節変動の影響を受けやすい
- 建築資材や人件費の高騰が深刻化している
1-1 先行支払いが多い
まず建設業の資金繰りの特徴として、先行支払いが多いことが挙げられます。建設業では、一般的に売り上げの請求を起こす前に以下のような費用を先行して支払わなければなりません。
- 材料費
- 人件費
- 外注費
- 設備費 など
会社の資金に余裕がないと先行支払いを行なってから売り上げが入金されるまでの間は資金繰りが厳しくなってしまいます。さらに、プロジェクト進行中に諸事情で想定外の外注費や材料費などが発生した場合、追加で資金が必要になります。必要な資金が不足するとプロジェクトの進行に遅れが生じたりなどのトラブルが発生する可能性があるため、事前に入念な資金計画を立てておくことが重要です。
1-2 入金されるまでの期間が長い
日本全体の建設工事の30%〜40%を占める公共工事は、広く前払金の制度が導入されています。また、民間工事でも毎月の出来高請求形態もあれば、前金、中間金がもらえる会社も多く存在します。
しかし、一般的とまではいえませんが、工事が完了するまでお金をもらえない工事も存在します。
また、建設業は手形取引が多い業種です。手形取引とは、取引先と取り決めた金額を特定の期日に支払う約束をした取引のことです。つまり、発注元が支払サイトを伸ばすために手形を利用した場合、手元に現金が入ってくるまで時間がかかります。手形取引は現在廃止の方向には向かっていますが、長年の業界商慣習として依然として残っています。
先行支払いが多いことに加えて、売り上げ金が入金されるまでの期間が長い工事を受注した場合、手元の資金でやりくりしなければなりません。
1-3 工期延長が発生する場合がある
建設工事においては、工期が決められており予定通りプロジェクトを進めなければなりません。しかし、以下のような理由から工期が予定よりも延長する場合もあります。
- 工事の施工ミス
- 資材不足
- 人手不足
- 台風や地震などの自然災害
工事が完了するまでお金をもらえないような工事の場合、工期延長が発生するとさらに現金が入金されるまで時間がかかってしまうため、資金繰りが悪化してしまう可能性が高くなります。
1-4 現場ごとの入出金状況に対応する必要がある
繁忙期や事業の好調時などにおいて、複数の案件を受注している場合は、同時並行でプロジェクトを進めなければなりません。
当然ですが、現場ごとに入金や出金のタイミング、そして金額も異なるため、個々のプロジェクトの入金サイトや支払サイトを正確に把握するなど、精緻な資金繰り管理が必要です。また、それぞれの現場において外部環境の変化による想定外のコストが発生した場合の備えや資金計画も立てておくことが大切です。
細かな取り組みになってきますが、これらも経営者の仕事になってくるため、「複数の案件対応で忙しい」などを理由に足元や将来の資金繰りをきちんと確認しないと、経営が苦しい状態になる可能性があります。
1-5 季節変動の影響を受けやすい
建設業においては季節変動の影響を受けやすい業種であり、一年を通して受注状況に波があります。繁忙期は受注数も多く売り上げ高は伸びますが、同時に多額の先行支払いが発生するため資金が一時的に流出します。一方、閑散期は受注数が減るため、収入が減少します。
つまり、繁忙期と閑散期の資金繰りのバランスをとりながら、長期的な視点で会社の資金を上手に循環させる必要があるということです。
ちなみに、公共工事は2月、3月に完成引き渡しが集中し、4月〜6月は新規発注が少ない閑散期になりやすい傾向があります。
また、建設工事は雨季や猛暑、雪、寒さによって作業効率が低下したり、工事そのものが中断されたりするケースもあるため、季節変動の影響を常に頭に入れて資金繰り管理を行う必要があります。
1-6 建設資材や人件費の高騰が深刻化している
建設業では、近年資材価格や人件費の高騰が深刻化しています。
一般財団法人建設物価調査会が公表している調査をみてみると、新型コロナウイルスが起因となったウッドショックや、ウクライナ問題による情勢の悪化などによって2021年以降大幅に資材価格が高騰していることがわかります。ウッドショックとは、木材の供給がひっ迫して資材価格が高騰する現象を指します。

※引用元:資材物価/工事費指数 | 建設物価調査会
また、帝国データバンクの人手不足倒産の動向調査(2024年)によると、建設業の就業者に占める60歳以上の割合は23.9%と全業種と比較しても大きく上回る結果となっており、職人の需要も高まりにより人件費も高騰しています。

※引用元:人手不足倒産の動向調査(2024年) | 帝国データバンク
実際に国土交通省の調査によると、平成25年から13年連続で建設業の労務単価が上昇していることがわかります。

※引用元:令和7年3月から適用する公共工事設計労務単価について | 国土交通省
このような工事で発生するさまざまなコストの高騰も建設業の資金繰りが難しいとされる理由となります。
1-7 元請けとの力関係がある
建設業は、「元請け→下請け→孫請け」という流れで仕事が発注されるのが一般的で、元請けが力を持つピラミッド型の「重層下請構造」による取引が行われています。
この構造で下請けへの発注が増えるほど、その都度マージンが差し引かれることになるため、結果として利幅の取れない仕事を引き受けなければならない状況になるケースも多いです。特にスモールビジネスを展開する中小企業は、大規模工事の案件だと重層下請構造の末端で仕事を引き受けることになります。
また、中間金や着手金などの資金繰りに関する要望に応えてもらえなかったり、重層下請構造の関係性に囚われてしまい、「言いたいことを言えない」という心理状態に陥る経営者も少なくありません。
2 建設業において資金繰りが苦しくなる・資金ショートする具体例

建設業において資金繰りが苦しくなったり、資金ショートしてしまったりする原因はさまざまですが、具体的なケースをまとめると以下の通りです。
- 入金サイクルが長く、手元の運転資金が不足してしまう
- 利益が出ないような赤字案件を受注している
- 自社の資金状況をきちんと把握しないまま、規模の大きい案件を受注し多額の先行支払いに対応しきれなくなる
- 外部環境の変動により想定外の支出がする
- 経営状態の悪化により新規で融資を受けられない など
このような状態になると最悪倒産につながるため、経営者は事前に対策を徹底する必要があります。
3 建設業における資金繰り改善のポイントと対策

建設業において安定した資金繰りを実現するためには、以下の8つのポイントを意識して対策することが大切です。
- 十分な運転資金を確保しておく
- 資金繰り表を作成して入金出金管理を行う
- 見積もりを正しくとり受注する案件を見極める
- 予実管理を行い現場の収支実績をこまめに確認する
- 代金を早期に回収できる案件を増やす
- 事業が好調の時こそ資金繰り管理を徹底する
- 与信管理を徹底する
- コスト削減を図り支出を抑える
3-1 十分な運転資金を確保しておく
建設業においてはまず、多額の先行支払いに対応するためにもつなぎとなる運転資金を十分に確保しておくことが大切です。会社に一定の資金がないまま案件を受注してしまうと、工期延長や想定外の支出の発生などに対応しきれずに資金ショートしてしまう可能性が高まります。
建設業の運転資金の確保には、業界特有の融資手段である「工事引当融資」を活用できます。工事引当融資とは、請け負った工事の代金を返済原資として、工事に必要な資金を短期間借り入れる手段で、返済は工事代金が入金された後のタイミングで行えます。
ただ、工事完了までの一時的な資金の確保ではなく、現状会社そのものを運営していくための運転資金が不足している場合は、経営の安定化を図るために長期の借入を検討することが大切です。
先ほども述べたような建設業の資金繰りは難しく、状況の悪化も招きやすいため、あらゆる事態に対応するためにも複数の資金調達ルートを確保しておくことをおすすめします。建設業の資金調達方法については後に紹介します。
3-2 資金繰り表を作成して入金出金管理を行う
資金繰り表とは、会社の一定期間における収支状況を可視化した表のことです。資金の流れを正確に把握するために欠かせないツールであるため、経営者にとって資金繰り表の作成は重要な仕事の一つです。
資金繰り表を作成して未来の入出金状況を細かに把握すれば、事前に必要な対策を実行できるため資金ショートを未然に防げます。また、金融機関から融資を受ける際にも資金繰り表は役立ちます。
資金繰り表の作成方法や実際の作成に使えるフォーマットについては以下の記事で紹介しているのであわせてご覧下さい。
資金繰り表とは?種類やメリット、作り方を初心者にもわかりやすく解説
3-3 見積もりを正しくとり受注する案件を見極める
工事を受注する際に見積もりが甘いと、売り上げはあっても出費が多く利益が出ない状態になり、その結果赤字へと転落してしまうケースもあります。
また、赤字とわかっていながらも元請けに頼まれてやらざるを得ないような案件もあるため、「次の現場で返すから」というような言葉を安易に信じて利益が出ないような案件を受注するのは要注意です。
実際には元請けからはそう言われながらも、お金を返してもらえないケースや無理な案件の受注によって大幅に資金繰りが悪化するケースはよくみられます。下請けの立場でいると、どうしても元請けの言うことを断りづらくなりがちですが、それに振り回されていると、自分の会社を守るための正しい判断ができなくなってしまいます。
だからこそ、「なんとなく」や「頼まれたから」ではなく、しっかり数値に落とし込んで見積もりを正確にとり、受注する案件を見極めることが大切です。
3-4 予実管理を行い現場の収支実績をこまめに確認する
予実管理とは、工事が始まる前に計画した「予算」と工事開始後の「実績」を比較しながら個々のプロジェクトの状況を管理・監視する手法を指します。
建設工事は長期に及び、外部環境の変動を受けやすいため、事前に立てた予算と実際に発生する費用に差が生じるケースもよくあります。
予実管理を行い、こまめに現場の収支実績をチェックすれば早期に予算と実績の差異を確認できるため、逸脱費用の削減や数値目標の見直しなど必要な対策をその都度実行することが可能になります。
徹底した予実管理は、プロジェクトを予算内で完了させ、安定的な利益を確保するためにも重要な取り組みです。
3-5 代金を早期に回収できる案件を増やす
資金繰りの観点から考えると、当然ですが売り上げ金の入金はできるだけ早いほうが良いため、代金を早期に回収できる案件を積極的に増やしていくことも大切です。
例えば、工事の進捗に合わせて毎月一部の代金を支払う出来高請求形態を採用している案件や、前金や中間金を支払ってくれる案件を選ぶと、資金繰りの安定化や改善につながりやすいでしょう。
工事完了後の一括払いの案件では、資金繰りのリスクが高まりますが、交渉次第では予定よりも早く回収できる可能性もあるため、取引先に依頼してみるのも一つの方法です。
3-6 事業が好調の時こそ資金繰り管理を徹底する
繁忙期や事業が好調の時など売り上げ高が急激に増加するシーンにおいては、同時に先行投資も増えることになります。また、同時並行で複数の案件を管理しなければなりません。
そのため、経営者は好調な時こそ冷静に足元や将来の入出金予定をしっかり把握するなど、適切な資金管理や計画を行う必要があります。時間をつくって銀行との関係構築に力を入れておくのも良いでしょう。自社の状況や工事の進捗、今後の調達のタイミングなどを共有しておくことで、信用の維持や向上にもつなげられるでしょう。
3-7 与信管理を徹底する
与信管理とは、企業が商品やサービスを提供した際の代金を取引先から確実に回収するための取り組みのことであり、資金繰り対策としても重要です。
工事代金の回収遅延は資金繰りに悪影響を及ぼし、万が一元請けが倒産した場合は連鎖倒産する可能性もあります。
そのため、取引開始前には取引先の情報収集や分析、信用力の評価などを行い、契約する上で問題がない企業かどうか十分にチェックしておきましょう。
取引開始後も定期的に取引先の信用状況を確認し、必要に応じて条件の見直しを交渉するなどして資金繰りのリスクを低減することが大切です。
3-8 コスト削減を図り支出を抑える
建設工事においては、材料費や人件費、外注費、設備費などさまざまな費用が発生します。
会社の利益を増やして資金繰りを安定化させるためには、売り上げを上げることだけに意識を向けるのではなく、コスト削減にも注力する必要があります。
例えば、先ほども解説した通り資材価格は高騰化していますが、品質の維持を考慮しながらも仕入れ先の見直しを行うことでコストを削減できる可能性があります。
また、現場毎の予実管理をしていると、コスト削減の余地が見えてくることがありますので、ぜひチェックしていただきたいと思います。
4 建設業における主な資金調達方法

建設業における主な資金調達方法は以下です。
- 銀行融資
- 補助金・助成金制度
- ビジネスローン
- ファクタリング
4-1 銀行融資
銀行融資は、銀行が企業に対して事業を運営するために必要な資金を貸し出す制度のことです。銀行融資なら返済能力や計画に問題がなく、信用力が高いとみなされれば比較的低金利で大きな金額を借りられる可能性があります。業績悪化で経営状態が良くない場合は、経営計画を作成して将来の見通しを示すなど、返済能力をきちんと証明することが審査通過のポイントになります。
また、直接融資を受けるプロパー融資の他、信用保証付き融資や日本政策金融金庫のセーフティネット貸付なども選択肢として挙げられます。なお、運転資金の確保においては先ほど紹介した融資手段である「工事引当融資」を積極的に活用すると良いでしょう。
中小企業が銀行融資を受けるには?主な種類や審査通過のポイントを徹底解説
4-2 補助金・助成金制度
補助金・助成金制度は、国や地方自治体から支給される資金です。設備投資などを目的として活用することでコスト削減を図りながら、事業の拡大や省力化を実現できます。
また、補助金や助成金なら原則として返済不要であるため、資金調達後の返済負担を抑えられます。
ただし、審査に通過できた場合でも後払いになるため、資金が支給されるまでの間は自社で立て替えておく必要があります。
資金調達におすすめの補助金・助成金6選!メリットや注意点も解説
4-3 ビジネスローン
ビジネスローンは、銀行やノンバンクが提供する事業資金専用のローン商品です。ビジネスローンなら銀行融資と比較して審査が比較的に緩く、手続きも容易であるためすぐにも支払いが必要など緊急性が高いシーンでも利用しやすい手段です。
また、赤字や債務超過でも融資が実行されるケースもあるため、業績悪化で銀行融資の審査に断られてしまった場合でも、代わりの手段として検討することも可能です。
法人が事業資金を借りやすい手段は?調達期間・申し込みハードルなどの観点から紹介
4-4 ファクタリング
ファクタリングとは、自社が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却して早期に現金化する手段です。実際の支払い予定日よりも早く手元にお金が入るため、一時的な資金繰り改善の手段として活用できます。
しかし、手数料が非常に高く、その場しのぎで何度も利用していると抜け出せなくなってしまう危険性があります。「会社のお金を増やす」という行為ではないため、私たちは利用を推奨しておりません。
その他、法人が検討できる資金調達手段は以下の記事でまとめています。
5 建設業の資金繰りの課題解決ならリンクソートコンサルティング

建設業において資金繰りに課題があり、自社では解決が難しい場合は私たちリンクソートコンサルティングにお任せ下さい。
私たちは中小企業の資金繰り改善や事業再生を支援しており、実績数1,000社以上の国内トップレベルの実績を持ちます。
これまでさまざまな業種の中小企業を支援してきましたが、建設業の企業様からの相談も多く、私たちの豊富な経験とノウハウ、専門ネットワークを駆使して解決に導いております。
6 【建設業】リンクソートコンサルティングの解決事例
参考までに私たちが手がけた建設業の相談案件における解決事例を2つご紹介します。
6-1 4期連続赤字の会社を黒字化させた事例
まず、4期連続赤字の建築工事業のB社を黒字化させた事例を紹介します。
当初、経理担当者のAさんが会社の資金繰りが厳しいとのことで相談に来られました。相談時は社長との経営改善のための話し合いもうまく進まず、毎月の仕入れ先や外注先の支払いも厳しい状態でした。
そこで私は会社の状況を分析したのですが、経営悪化の原因は社長の「自分一人でなんでもやってしまう主義」にあると考え、まずは社長の意識改革に取り組み、全社員が再生に向けて同じ方向を向くよう協力しました。
そして足元の改善として銀行へのリスケ交渉や支払いサイト、保険の見直しなど、合計約7000万円分の資金繰り対策を成功させました。
資金繰りが安定した後は、営業活動へとシフトした上で粗利の管理も徹底して実施するようアドバイスを行い、4期ぶりの黒字を確保することに成功しました。
こちらの詳細については以下の記事をご覧下さい。
6-2 資金繰りの悪化を銀行との折衝で改善した事例
2つ目の事例は、資金繰りの悪化を銀行との折衝で改善した金属工事業のN様の事例です。
N様は業界特有の先行支払いによる資金繰りの難しさに課題を感じており、売り上げはあっても利益があまり出ていなかったりなど、悪循環に陥っていまいた。
そこで私たちにご相談頂いた流れになるのですが、まずは銀行との折衝に協力し、足元の資金繰りの改善に取り組みました。
次に黒字化に向けて、受注案件に対する管理体制を構築するために定期的な営業会議の実施を提案し、受注案件の数字や情報を社員間で共有できる仕組みを構築しました。
その結果、工事の進行中にも利益率を把握できる体制ができ上がり、創業以来過去最高益を達成したのです。また、借金問題を改善するために、私たちは新しいメインバンクを提案し、新規融資の獲得にも成功しています。
こちらの事例の詳細は以下の記事をご覧下さい。
7 建設業の資金繰りは業界特有の事情や課題を理解して対策をとろう
建設業において資金繰りを適切に行うためには、業界特有の課題を十分に理解した上で必要な対策を検討する必要があります。
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