資金繰り表とは?種類やメリット、作り方を初心者にもわかりやすく解説
会社の資金の流れを可視化して適切に把握するためには、資金繰り表の作成が役立ちます。
実際に資金繰り表を作成しようと考えているが、作成方法や見方について理解していない経営者もいるのではないでしょうか。
この記事では、資金繰り表を作成するメリットや手順、見方などを詳しく解説します。ぜひ資金繰り表を作成する際の参考にして下さい。
1.資金繰り表とは?
資金繰り表とは、会社の一定期間における資金の動きを示した管理表のことで、日次、月次、年次と期間を設定して作成します。
一般的に月単位で作成するケースが多いですが、資金繰りが厳しい状況であれば日繰り表で細かにチェックすることもおすすめです。
なお、資金繰り表に関しては、実際に作成する際に決まったルールはありません。
自社の状況や目的にあわせて期間や項目を設定して作成します。
2.資金繰り表のタイプ
資金繰り表には、「資金繰り実績表」と「資金繰り予定表」の2つのタイプが存在します。
資金繰り実績表とは、過去の営業実績をもとに会社の資金の動きを示したものです。
過去の実績から資金の動きを分析することで、現状の資金繰りの課題点を洗い出すことができ、適切な施策を検討することが可能です。
一方、資金繰り予定表とは経営計画や過去の実績をもとに、将来の資金の動きを予測して作成される表のことです。
具体的には数ヶ月〜1年先までの現金売り上げや売掛金、支出などを予測して数値を記載していきます。
3.資金繰り表の作成目的
資金繰り表を作成する大きな目的は、資金ショートを未然に防ぐためにあります。
例えば、 BtoBビジネスにおいては売り上げが発生した場合でも、必ずしもすぐに現金が入金されるわけではありません。
つまり、売り上げの発生と実際の入金にタイムラグが生じるため、資金繰りを適切に行わないと「手元にお金がない」という状況が発生します。
資金繰り表を作成すれば、現状の資金はどのくらいあるのか?入金や出金のタイミングはいつか?今後いつ資金不足になりそうか?などを正確に把握することができるため、適切な資金管理や事前対策につなげられます。
4.資金繰り表とキャッシュフロー計算書との違い
会社の資金の流れを把握する書類として資金繰り表の他にも、キャッシュフロー計算書があります。
キャッシュフロー計算書とは、会計年度における1年間の会社の資金の流れをまとめた書類のことです。
財務諸表のひとつとして、貸借対照表や損益計算書とともに上場企業などは有価証券報告書に記載する義務があります。
資金繰り表は主に「将来」の会社の資金の動きを予測するための書類であり、会社独自で作成します。
一方キャッシュフロー計算書は、「過去」の会社の資金の動きを示した書類で企業によっては法律で作成が義務づけられているのが両者の違いです。
5.資金繰り表を作成するメリット
資金繰り表を作成するメリットには以下の3つがあります。
- 黒字倒産の防止につながる
- 経営の判断材料になる
- 金融機関での融資手続きに役立つ
5-1 黒字倒産の防止につながる
黒字倒産とは、会計上では利益がプラスになっているのにもかかわらず、手元に現金がないことから支払や借入金の返済ができずに倒産してしまう状態のことです。
先ほども少し触れましたが、商品やサービスを販売した後に売り上げ金の入金が後日になるような取引においては、資金管理を適切に行わないと黒字倒産のリスクが高まります。
資金繰り表を作成すれば、今後いつ現金が入ってきて、いつ出ていくかというタイミングを正確に掴めるため、手持ちの資金の管理がしやすくなり、黒字倒産を防止することができます。
「資金繰り 黒字倒産 」
5-2 経営の判断材料になる
資金繰り表は会社の経営戦略の立案にも役立てられます。
例えば、資金繰り表を見て「現状は資金に余裕がある状態である」とわかったのなら、設備投資に資金を回して事業のさらなる発展を目指すという戦略をとることが可能です。
反対に「現状の資金繰りでは半年後には資金が不足する可能性がある」と予測できたなら改善のためにはどのような施策を検討する必要があるかなど、資金繰り表の活用は経営におけるさまざまなシーンでの判断材料となります。
5-3 金融機関での融資手続きに役立つ
資金繰り表は金融機関での融資手続きにも役立ちます。
金融機関から融資を受けるためには、希望する融資の金額とタイミングにおいて、論理的に理由を説明しなければなりません。
資金繰り表を活用すれば、借入の必要性や返済能力を数字的な根拠をもって金融機関に説明できます。
そのため、融資を受ける際には事業計画書とあわせて資金繰り表を用意しておきましょう。
なお、融資手続きについては資金繰りや事業再生支援を展開しているコンサルティング会社のサポートを受けるのもおすすめです。
6.資金繰り表の作成手順
ここからは実際に資金繰り表をどのように作成していくのか手順を紹介していきます。
具体的なステップは以下になります。
- 必要な資料を準備する
- フォーマットを用意・作成する
- 各項目に数値を入力していく
6-1 必要な資料を準備する
資金繰り表を作成するためには、具体的な数値を記載するための書類を用意する必要があります。
ここでは、実績数値と予測数値の入力に必要な書類を紹介します。
6-1-1 実績数値の場合
実績数値を記載する場合は、以下の書類を用意します。
月次試算表 | 最新の経営状態を把握するために会計期間を1ヶ月ごとに区切って作成する試算書 |
---|---|
現金出納帳 | 現金の入出金を記録するための帳簿で「金銭出納帳」とも呼ぶ |
預金出納帳 | 預金の入出金を記録するための帳簿 |
6-1-2 予測数値の場合
予測数値の場合は以下のような書類を用意します。
設備投資予算書 | 設備の購入に必要な資金の計画を示した書類 |
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将来の販売計画書 | 特定の期間における売り上げ目標を達成するための計画をまとめた書類 |
人員計画書 | 経営目標を達成するための必要な人材の整理やそのために必要なコストをまとめた書類 |
手形帳 | 手形の内容を記入する帳簿で支払手形記入帳と受取手形記入帳がある |
借入金返済明細書 | 借入金残高などを示した書類 |
6-2 フォーマットを用意・作成する
必要な書類の準備ができたら、資金繰り表のフォーマットを用意・作成します。
資金繰り表に決まったフォーマットはありませんが、基本的には「経常収支」「投資収支」「財務収支」の3分類で考えて作成していきます。
作成方法は、自社でエクセルを活用して作成することも可能ですが、会計ソフトでも簡単に作成できることがあります。
なお、弊社リンクソートコンサルティングでは、以下のフォーマットを採用しているのでぜひダウンロードしてご活用下さい。
ダウンロードリンク (準備中)
6-3 各項目に数値を入力していく
資金繰り表のフォーマットを用意したあとは、実際に準備した書類を参考にしながら各項目に数値を入力していきます。
以下では「資金繰り予定表」のケースで大まかな数値の入力手順を紹介します。
- まずは資金繰り表の開始月を決める
- 開始月の現預金残高を「前月繰越」へ入力する
- 売り上げの予定を入力する(売り上げ代金以外の補助金などの収入も入力する)
- 商品の仕入代金や経費などの支出予定を入力する
- 投資収支や財務収支などその他の収支項目を入力する
投資収支とは、設備投資や車両や土地などの売却額を記載する項目であり、財務収支は銀行からの借入金による収入・支出を記載する項目です。
上記の手順で完成した資金繰り予定表の完成イメージは以下のようになります
7.資金繰り表を作成する際の注意点
資金繰り表の作成において予算を立てる場合は、少し厳しめに考えることをおすすめします。
なぜなら予算を甘く考えてしまうと、状況によって予定より多くの資金が必要になった場合に資金ショートする可能性が高まるためです。
また資金繰り表は一度作成して終わりではなく、会社の経営状況に合わせて都度修正しなければなりません。
例えば、今後の事業拡大に伴い人員計画に変更があった場合は、それに応じて人件費の予定支出を増やす必要があります。
適切な予算設定と臨機応変な資金繰り表の修正で安定的な経営を実現しましょう。
8.作成した資金繰り表の見方・読み方
実際に作成した資金繰り表の見方や読み方について解説します。
8-1 経常収支がプラスになっているか
経常収支とは、会社の日々の営業活動(本業)で発生する収支のことです。
資金繰り表を見て経常収支がマイナスになっている場合は、赤字であることが多いため原因を特定して早期に対策を打つ必要があります。
その他にも、経常収支がマイナスになっている原因としては、黒字ではあるが、それ以上に仮払金・立替金・貸付金のような銀行が嫌う資金の動きが多い、売上が急激に増えていて、それに伴い先行支払いが発生している、などが挙げられます。
経常収支は黒字であることの方が望ましいですが、先行仕入がある業種で、売上が急激に増加する場面ではやむを得ないと言えます。
8-2 財務収支が経常収支より下回っているか
財務収支は借入金と返済による資金の流れを示した項目であるため、マイナスになっている状態であれば借入金を返済しているということであり、それはそれで問題はありません。
しかし、財務収支のマイナスが経常収支のプラスを上回っている(借入金の返済額が経常収支より多い)場合は、収益力以上に返済が進んでいることになります。
これを放置しておくと、現預金残高が減少していくため、状況が悪化する前に経常収支の改善を実施しなければなりません。
また、金融機関に対して返済条件の変更を交渉する「リスケジュール」などの対策が必要になる可能性もあります。
9.資金繰りの課題解決なら専門家への相談がおすすめ
資金繰り表を作成して自社の状況を分析した結果、資金繰りが良くない、そもそも資金繰り表の作成の仕方や見方がわからず正確に現状把握や将来予測ができないなどの課題を抱えているなら、専門家への相談がおすすめです。
私たちリンクソートコンサルティングで は、中小企業の資金繰り・事業再生を支援しています。貴社の資金繰りの改善から事業の黒字化、銀行融資などのサポートを行い、経営の自走化を実現します。
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10.資金繰り表を作成して安全な経営を実現しよう
資金繰り表は、自社の現状を把握し健全な経営活動を行うために重要な書類です。
資金繰り表を作成することで、黒字倒産の防止や経営の判断材料、銀行融資の手続きにも役立つためぜひ積極的に活用して下さい。
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