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回収できていなければ倒産していたかもしれなかった事例
ご相談の経緯
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企業データ
- J社
- 資本金:500万円
- 年商:3億円
- 従業員数:13名
- 業種:家具製造業
- ご相談時の経営状況:3ヶ月以内に資金繰り破綻を引き起こす可能性が高い状態
- 経営悪化の原因:新規事業の失敗、2,000万円の売掛金未回収によるもの
- 当社は、家具製造業であるが、事業が好調であったことから、新たに内装工事を始めた。しかし、社長は、新規事業を部門の責任者とした社員に任せきりで、業績の進捗状況をきちんと把握していなかった。気付いた時には後の祭り。当初から赤字工事が続いていただけでなく、未回収の売掛金も複数発生していた。それまで潤沢だった資金は減り、銀行からの借入も導入して、なお資金に不足をきたすようになってしまったのだった。このままでは、いずれ資金不足を引き起こして倒産してしまいかねない。そうした危機感を持たれ社長がご相談に訪れた。
仮差押えとは
■裁判を行わずとも差押えはできる。
相手が財産を処分したり、隠したりする危険性や、事業が悪化し倒産してしまう危険性を回避するため、裁判などを経ず、債権者(売掛金などを払ってもらえないあなた)の一方的な主張に基づいて、相手の財産を暫定的に差押する手続のこと。
但し、債権者の一方的な主張に基づいているため、最悪の場合、相手側に損害を与えることも考慮して、差押えする金額の10~30%の保証金を納める必要がある。(当然、何も相手に損害を与えていなければ戻ってくる)
また、あくまでも暫定的な差押えであるため、実際に差押えた資産を換金する場合、新たに手続きを行う必要があることも覚えておかねばならない。
[実行のポイント]
- 債権の存在(未払いの売掛金があることの証明)
- 保全の必要性(下記の特性1を満たしているかどうか)
[特性]
- 「緊急性」:裁判などの手続きを待っていたら、相手の財産がなくなってしまうかもしれない場合に仮の救済を与える制度。
- 「密航性」:裁判所は、あなたが仮差押えをすることを相手に伝えない。相手が差押を察知した場合に妨害する恐れがあるため、いきなり差押えを行うことができる。
- 「暫定性」:名称からも分かるとおり仮の差押ですから、差押えたものを換金するためには別途手続きを行う必要がある。
解決にあたって重視したポイント
- 初期のデューデリジェンス
- 緊急資金繰り対策(未回収売掛金の回収を含む)
- 抜本再生プランの実行
ご相談から解決までの流れ
- 1. ご相談
- 2. ご契約
- 3. デューデリジェンス
- 4. 経理財務体制の強化
- 5. 経営改善計画書の作成
- 6. 緊急資金繰り対策
- 7. 経営執行会議の導入
- 8. 抜本再生プランの作成
- 9. 新会社への事業譲渡
- 10. 負債の整理
未回収売掛金の回収を終えて 【代表:道家より】
■経緯
ご依頼を頂いた当初、未回収になっている売掛金は約2,000万円あった。その中で、2社に対する700万円分は、既に相手先が夜逃げをしており、回収可能性は限りなくゼロ。残りの1社、A社に対する1,300万円分は、納品した商品に対してクレームが入っており、請求額の折り合いがつかないままに約2年近くも放置されてしまっていた。当然、社長や担当者は相手先に何度も交渉していたが、「新しい仕事を廻すから」とか、「少しずつなら払う」とか、のらりくらりとかわされていたのだった。
しかし、確かに、不定期ではあるが、その仕事に対する代金として10万円程度が入金されていた。逆に見れば、相手も支払い義務は認めているものの、請求額を全額払いたくはないし、払うにしても、何らかの理由で、少しずつ払おう、そういう自分たちの都合を優先させた考え方であると推測された。
こちらに多少の非があるとしても、2年近く経過しているのはおかしい。当社の資金繰りを改善するためにも、この1,300万円は、どうしても、そしてできる限り早く、回収しなければならなかった。
■回収対象会社
- ・某業種のFC本部
- ・年商10億円程度
- ・従業員数不明
■対象売掛金
- ・内装工事代金
- ・残金1,300万円
■未払期間
・1年10ヶ月
■問題解決までの流れ
- 売掛金回収のご相談
- 「これまでの経緯」と「取引関係書類」の整理
- 回収プランの立案
- 対象会社の調査/クレームの元になった店舗の再調査
- 弁護士を交えての打合せ
- 弁護士による内容証明郵便の送付
- 対象会社は内容証明を無視
- 調査した資産に対する仮差押えの実行
- 弁護士と対象会社による和解交渉
- 回収
■結果
当社の担当者に、クレームの元になった店舗を再調査して頂いた結果、やはりそれによる不具合は微々たるものであることが改めて判明。証拠として、そのお店の店長からの証言と、納品した商品に対する不具合はないという書面も頂いた。弊社の方も相手の弱みとなる回収原資を発見。予定通り弁護士をご紹介し、内容証明郵便を発送した。
その1週間後、A社の役員が弁護士を無視して、当社へ払えないことを言うために乗り込んできた。本来は、弁護士が入った時点で、直接交渉はしてはいけないようになるのだが、稀にこうした事例もある。しかし、当社は既に明確な回収プランを持っていたため、社長はすぐに追い返した。逆に、ここで甘い顔をしていたならば、これまでの苦労が水の泡だったかもしれない。そして、間髪入れず、すぐに次の手順へと移行する。弊社が調査して判明した資産への仮差押(上記解説参照)だ。
これを実行した後、遂にA社から当社の弁護士へと和解交渉を持ちかけてきたのだった。
その和解交渉の際も、当初から得ている証拠物をもとに、クレームによる当社の非が少ないことを改めて主張。最終的には、当社の資金繰り都合を優先させ早めに和解を行ったのだが、売掛金の約8割、頭金700万円、残金300万円を6分割の計1,000万円で決着することができた。
■回収に至ったポイント
支払意思と支払能力を見極めて、事前に明確な回収プランを作成できていたことにある。回収できずに残ってしまっている売掛金などがある場合、何をしたら良いかわからないというケースと支払能力の見極めができていなケースが大半だ。この支払能力を見極める最大のポイントは、相手が商売を行う上で欠かすことができない要素が何か、これを明確にするということでもある。
■終わりに
弊社が回収活動のサポートに当たって4ヶ月、これまで約2年も交渉を重ねてこられた社長も、遂にこの債権回収という後ろ向きな仕事と悩みから解放された。結果的に300万円は当社が泣くことになったが、多少なりと非があったこと、そして、当社側も和解を急がなければならないという資金繰りの事情があり、これ以上長引かせても得策ではないという判断のもとでの和解だった。
そして、和解成立後、すぐに頭金700万円が入金され、遅れていた仕入先や外注先への支払にも充てることができた。
「これがもう少し遅れていたら、本当に倒産していたかもしれない・・。」
そんな、社長の血を吐くような言葉が、今も私の頭に残っている。