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自殺まで考えたが不動産の任意売却を成功させ再生した事例
ご相談の経緯
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企業データ
- T社
- 資本金:5百万
- 年商:2億
- 従業員数:8名
- 業種:建設工事業
- ご相談時の経営状況:3ヶ月以内に資金繰り破綻を引き起こす可能性が高い状態
- 経営悪化の原因:管理能力不足による大幅な赤字
- 当社は、大手企業の下請けとして、現場に派遣した職人の数に対して手間賃をもらうシンプルな商売を行っていた。ところが、ある時から、現場ごとの請負工事になり、見積もりが複雑になっていく。ここから仕事の歯車が大きく狂ってしまった。間違った見積もりで受注して大赤字になったり、材料の発注数を間違えて不要な在庫を抱えたりとミスが続き、会社全体として大きく赤字に傾いていく。その間、銀行から借入を行い、何とか資金繰りをつないでいたものの、遂には、正常な借入が難しくなり、苦しんだ挙句、悪質な融資ブローカーに捕まってしまった。粉飾決算による借入を複数行い調達は成功するが、融資額の30%にもなる手数料を取られてしまったのだ。結果、一時的には楽になったものの、すぐにより厳しい状態となり、目もうつろで自殺も考えているという息子さんがご相談に来られた。
不動産の任意売却 【代表:道家より】
■いざという時の不動産売却
任意売却とは、「不動産を担保にお金を貸している債権者」と交渉し、1)その不動産の売却代金で借入金を完済できないこと、2)残った借入金の返済方法を改めて相談すること、この2つに承諾を頂く形で行う不動産売却のことを言う。
一般的には、住宅ローンを借りている場合や、不動産を担保に借入をしている場合、その借入金を完済しない限り、その不動産を売却することはできない。現にこの状態であると、多くの不動産会社に売却を断られてしまう。そのため、売却代金で借入の精算ができない場合、所有者が持ち出して精算することがほとんどだ。
しかし、諸事情から、その不足額を準備できないことも多い。そうして売却できないでいる中、資金繰りが厳しくなった所有者が借入金の支払をできなくなり、裁判所を介した競売によって強制的に売却されてしまうことが多々ある。
競売になると、
-(競売のデメリット)---------------------------
- 相場よりも安く売られてしまうため、家を失ってなお、多くの借入金が残る
- 残った借入金の返済方法を交渉できない
- 購入者の都合で立ち退きを迫られる
- 競売物件として情報が公開され近所に知られてしまう
- 立退料などはもらえない
- 先行きが見えずに心理的な負担が大きい
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といったデメリットが出てくる。
これを回避するため、任意売却を行うことで、
-(任意売却のメリット)--------------------------
- 相場に近い価格で売却できるため、借入金を少なくできる
- 残った借入金は少しづつ、無理なく返済できる
- 引越し時期など、ある程度希望を聞いてもらえる
- 近所に事情を知られることはない
- 交渉次第で引越代をもらうことができる
- 所有者側主導で交渉するため、先が見通しやすく安心感がある
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といったメリットを得ることができるのだ。
解決にあたって重視したポイント
- 初期のデューデリジェンス
- 緊急資金繰り対策
- 自宅の任意売却
ご相談から解決までの流れ
- 1. ご相談
- 2. ご契約
- 3. デューデリジェンス(事業及び不動産)
- 4. 経理財務体制の強化
- 5. 経営改善計画書の作成
- 6. 緊急資金繰り対策
- 7. 自宅兼事務所の任意売却
- 8. 事業承継(息子さんへの代替わり)
- 9. 経営改善計画の修正+実行管理
- 10. 負債の整理
不動産の任意売却を終えて 【代表:道家より】
■経緯
息子さんがご相談に来られた時点で、既に金利の高いノンバンクからの借入も複数あった。税金を払えていなかったことから、会社で所有している不動産にも差押えが入っていた。そして、悪いことに、父親である社長は体調を崩し入院していた。会社の資産を全て売却しても負債は残る状態だ。このままでは、全ての借入の連帯保証人である息子さんは、会社の借入の担保には入れていないものの、自宅を売却せざるを得なくなる。子供はまだ小学生と中学生であり、転校させるのも忍びない。奥様にも相談したが、むしろ喧嘩になってしまったという。膨らんだ借入金とやってもやっても利益のでない事業、そこに家族の問題をも抱えてしまったことから、息子さんは鬱状態に追い込まれてしまった。
しかし、会社で所有している不動産を売却し、残った借入金を無理のない範囲で、少しづつ返済するよう返済条件を調整することができれば、しばらくの間、なんとか手持ちの資金で資金繰りを廻せる。この間に、事業を黒字化させれば、会社も息子さんの自宅も守ることができる、そう判断した私は、経営改善計画を息子さんと共に作成し、入院中ではあったが社長に任意売却の提案を行った。
■対象不動産概要
- ・自宅兼事務所
- ・社長夫婦居住中
- ・土地:30坪
- ・建物:3階建て
- ・築15年
- ・特徴:角地
■不動産評価額
・3,000万円
■担保状況
・ノンバンク担保設定額3,000万円(借入残金2,500万円)
・仕入先担保設定額1,000万円(未払残金1,000万円)
・税務署差押え(未納額100万円)
■購入者への売却条件
- ・売却後6ヶ月の間は引っ越し先を探す期間として見る
- ・上記期間中は売主が無償で居住すること
■問題解決までの流れ
- 任意売却のご提案
- 不動産の調査/価格設定
- 購入者の募集
- 売却価格と諸条件の調整
- 債権者との交渉
- 売買契約(6ヶ月賃貸条件付き)
- 代金決済(=債権者への返済)
- 所有権の移転
■債権者との交渉について
不動産の売却代金をもらう権利は、不動産に担保設定を行った順番通りに優先権がある。3,000万円で売却できるとすれば、第一順位のノンバンクは残金2,500万円を満額もらうことができるが、第二順位の仕入先は1,000万円中500万円しかもらうことができない。また、差押えしている税務署にはまったく払えないということになる。しかし、一方で、差押え債権者を含めた全ての債権者の同意がなければ、不動産を売却することはできないというのがルールだ。
そのため、本来は売却代金をもらうことができない税務署にも、売却自体に同意してもらうためにお金を払う必要がでてくる。これをハンコ代と呼ぶ。今回は、この任意売却を実現するため、税務署には30万円のハンコ代を払うこととした。そして、仕入先には、経営計画を提出し、今後の取引の中から分割支払を行うことを条件に、100万円で売却に同意して頂いた。
結果、ノンバンクに2,500万円(完済)、仕入先に100万円(残金900万)、税務署に30万円(残金70万)、手元に370万円残すことができた。これを、引越代、諸費用、その他複数のノンバンクへの支払い、運転資金に当て、最も頭の痛かった問題を解決した。
成立のポイントは、『不動産の価格設定』と『事業の再建計画』にある。
資金繰りが厳しく競売寸前まで追い込まれていたが、任意売却にすることで市場価格での売却ができた。これにより、第一順位のノンバンクを完済してなお余る資金を確保することができ、事業の再建計画を煮詰めたことで、仕入先とも話をまとめることができたのだ。
■終わりに
任意売却と同時に進めていたのが、銀行借入の返済条件変更だった。粉飾決算を犯しての借入だっただけに慎重に対応したが、これにも目途がつく。その頃には、息子さんの目にも力強さが戻ってきていた。自殺を考えていたほどに落ち込んでいたが、やればできるのだと自信もついてきたという。その後、無事に事業は黒字化し、新たな成長ステージに入った。
ここで、息子さんには1つの目標を持って頂くことにした。よく考えて頂いた結果、それは、福利厚生のために「東京ドームの巨人戦シーズンチケットを購入する」というものになった。社長はじめ社員の皆さんが野球好きだからであり、100万円以上するこのチケットを買えるだけの会社になる、という決意の表れでもある。私を招待して頂けるという約束を果たしてくれるのか、今も楽しみに待っている。
ところで、これだけは言っておきたい。お金の問題で自殺するなど何とももったいない。人生、生きていれば必ず逆転のチャンスがある。当該事例の社長もそうであるように、土壇場から立ち直った会社とその経営者を多く見てきた私からすれば、そう思えて仕方ない。もし、少しでもそういった考えがよぎってしまったのなら、世間話をするような気持ちで相談にきてほしい。お話はゆっくり聞かせて頂くし、必要とあらば必ず力になることを約束する。