6種類の決算書を作っていた会社の復活事例

ご相談の経緯

企業データ

  • F社
  • 資本金:3千万
  • 年商:15億
  • 従業員数:20名
  • 業種:広告代理業
  • ご相談時の経営状況:実質赤字でありながら6種類の決算書を作り銀行から借入を繰り返していた
  • 経営悪化の原因:新規事業の失敗とメイン取引先の売上急低下
当社は、創業50年を超える老舗企業である。社長は2代目となっていたが、創業当時からのメイン顧客に寄り添った経営を行っていた。メイン顧客の売上比率は90%を超える。問題の発端となったのは、社長が行った新規事業である。子会社を設立し、本業とは関係のない事業に4年間で4億円の資金を投下したが、事業化できずに頓挫してしまった。本体から貸付けの形で投下された資金は焦げ付いた。そして、それによる資金繰り悪化を改善する手段として、粉飾決算による資金調達を行ってしまったのだった。しかし、遂にはそれでも融資が出なくなる。さらに悪いことに、メイン顧客の売上が急低下した影響から、売上が昨年対比▲30%と激減。完全な経常赤字となった。無理な資金調達が仇となり返済ペースも異常に早く、借入金の返済と赤字による急速な資金減少に悩まされ、ご相談に来られた。

粉飾決算をして資金調達をしている、
しようと考えている中小企業経営者へ【代表:道家より】

意図的な粉飾決算での資金調達は犯罪・・

私は、金融機関時代から現在まで通して、資金繰りの厳しくなった1000社を超える中小企業の決算書を見てきたが、意図的かどうかは別にして、感覚的には70%を超える企業が何かしらの粉飾を行っている。特に多いのは、架空の売上や在庫の計上や売上の前倒し、原価や経費の翌期廻しなどを使った手法だ。土壇場まで追い詰められた経営者は、粉飾してでも資金調達をしたいと思ってしまうことがある。今発覚しなければいい、そう悪魔がささやく。しかし、改めて言うが、これは犯罪なのだ。

意図的に粉飾決算を行い資金調達を行った場合は、『詐欺罪』となる。刑事罰は、10年以下の懲役、犯罪によって得た利益は没収、または追徴(不足分を後から取立て)となる。民事上では、債権者から取締役等に対して損害賠償請求をされるケースもある。

確かに、経営は綺麗ごとでは片付かない側面が多々ある。全ての粉飾が発覚するわけでもない。私たちは、それでも思い止まって欲しい。仮に、そうして生き残ったとしても、それは犯罪に身を染めてまでした、ただの対処療法だ。中長期で見た時、根本的な問題解決にはなっていない。そして、多くの経営者が、一度粉飾してしまうと感覚がズレてくる。粉飾に粉飾を重ねてしまい楽な方に流れる。一方で手間のかかる打つべき手を打たない、打ち手に慎重にならない、金遣いが荒くなる。こうして得たお金で、経営改善をして以前よりも良い状態となり、借りたお金も全て返せたという話は聞いたことがない。どこかで必ず終わりが来るのだ。

もし意図的な粉飾決算をして資金調達をしようとしているなら、その道を進む前に、一度私たちに相談してほしい。誰にでも話せる話ではないことは十分に理解している。秘密は必ず守ることを書面でも出す。私たちは、悩み抜いている経営者と共に、根本的な解決策を考え実行する。必ず力になることを約束する。

粉飾決算を反省し元に戻していく道もある

もし、既に粉飾決算をして資金調達をしてしまっているならば、一刻も早く元に戻していくべきだ。金融機関の手前、そんなことはできない?確かにそうだろう。すぐにお金を一括で返済しろ、そう言われるに決まっている。しかし、この嘘をいつまで続けるのか?いずれ何とかなる、そう考えてどれくらいの時間が経っているだろうか?

私たちは、経営者が反省し、お客様のため、社員や家族のため、全ての利害関係者のために、新たな出発をしたいという明確な意思があるならば、前向きに協力させて頂く。必要があれば一緒に銀行にも頭を下げに行く。もちろん、頭を下げるだけで許してもらえるほど甘くはない。今後どうしていくつもりなのか、数字に裏打ちされた明確な方向性を示す必要がある。ただ、粉飾決算を反省し、元に戻していく道もあるのだということを知って欲しい。

私たちは、数々、粉飾決算の状態を元に戻してきたが、むしろ良くなることはあれ、そのために会社の経営状態を悪化させたことはない。

解決にあたって重視したポイント

  • 初期のデューデリジェンス
  • 粉飾決算の開示
  • スポンサー対応

ご相談から解決までの流れ

  • 1. ご相談
  • 2. ご契約
  • 3. デューデリジェンス
  • 4. 経営改善計画の作成
  • 2ヶ月
  • 5. 年間7億円の資金繰り改善効果をもたらす緊急資金繰り対策
  • 3ヶ月目~
  • 6. 銀行への粉飾決算開示
  • 6ヶ月目~
  • 7. 3億円の銀行借入金をカットする計画の作成
  • 12ヶ月目
  • 8. 銀行からサービサーへの債権譲渡開始
  • 9. 社長の自宅リースバック
  • 10. サービサーから債権の買取り
  • 24ヶ月目から

問題解決を終えて 【代表:道家より】

社長の甘さ

当初のデューデリジェンスを通じて、経営悪化の根本要因は、特にお金に対する“社長の甘さ”にあると感じた。子会社での新規事業立ち上げ時は、創業者が貯めてきた資金があったためか、当初から大きな資金を投下しており、慎重な事業計画が立てられていたとは思えなかった。そして、4年間で計4億円も投下していながら事業化できていない。また、重要な経営課題といえる、1社依存からの脱却を図るための営業活動には、担当役員を当てていたが成果はでていなかった。そればかりか、売上は毎期減少しており、特にご相談時は昨年対比▲30%であるにも関わらず、担当役員は一番の高給取りだった。そして、粉飾決算をしてまで調達したお金で、社員全員にギリギリまでボーナスを支給していたのだ。業績が悪化して以降も、6000万を超える役員報酬の削減はされていない、接待交際費も2000万を超えていた。これでは、社長の考え方が変わらない限り、一時的に資金繰りが安定したとしても、すぐまた元に戻ってしまう。社長の意識改革とマネジメント体制の強化が必要な状態であった。

-(マネジメント体制の変更)

危機回避をすべく新たなマネジメント体制を築いた。実質的に機能していなかった取締役会に代わり、経営執行会議という会議体を創設し、ここでの決定を会社としての意思決定とした。メンバーは、社長、経理部長、当社の顧問税理士と顧問弁護士に、私を加えた5名である。当会議では、当社の存続と再成長をゴールとして設定、そのために明確な数字をベースとした合理的な判断を行うこととした。まず第一に決定したことは、粉飾決算からの決別、そして、経営陣が身を切ることを含めた社内の大改革の推進である。また、経営改善を行うための正確な経営数値が必要であったため、実態の貸借対照表の作成、現在のまま経営した場合の損益計画と資金繰り予定表を作成することとした。

-(社長の意識改革)

架空売上の消込み、簿外債務の顕在化などを行い実態の貸借対照表を作成した結果、債務超過8億円という状態であることが判明した。これは、単純化していえば、資産総額よりも負債総額の方が8億円多い状態であり、仮に会社を清算すると8億円の借金が残るということであった。その大きな原因は、当然、子会社への4億円の貸付金、そして事業の赤字によるものだった。また、改革を何も行わない前提で1年間の資金繰り予定表を作成した結果、3ヶ月以内に手形の不渡りが出ることも明確になった。これまでは、粉飾決算を行い資金調達が出来ていたが、現在ではそれも不可能な状態になっている。足元で事業は赤字。さらに悪いことに、当社は支払手形を発行していた。それも、売上の繁閑が激しいため、一時的ではあるが手形の決済額も高額になってしまう月があるのだ。

ある程度分かっていたこととはいえ、関係者一同、改めて数字で見て絶句した。社長は青ざめ、もうダメなのかもしれないと急速に弱気になられた。無論厳しい状態ではあったが、取り得る手段はあったため、私は社長へ言った。このままでは確かに倒産するが、取り得る手段はある。これまでの経営を改め、例外なく大ナタを振るう気持ちを持って頂ければ、何とかできるはずだと。そうして、これまでの社長の甘さからの決別を促した。

緊急資金繰り対策

その後、経営執行会議では、元々当期赤字は避けられない状況だったこともあり、ここで過去の粉飾決算を始めとした膿を全て出し、翌期に最低限営業黒字化させることを目標とし、リストラプランを作成した。当面の売上見込みがこれまでの年商15億円から10億円未満の水準まで下がっていたことから、事業面では、子会社を生かすため無理に行っていた事業を本体に取り込み合理化。業務面では、第一に役員報酬と接待交際費の大幅な削減、高額の賃料が発生していた本社の移転、さらに過剰だった得意先へのサービスを停止することも決断し、これらを前提として給与の減額にも踏み込んだ。こうして年間1.2億円の損益改善効果を生むプランを立て、実行をフォローした。

また、財務面では、高額な保険積立金の解約、有価証券や会員権の売却等を行い、7000万円の資金を捻出、さらに、2億円の役員退職慰労金引当金をカットすることで財務改善効果を出した。また、こうした財務、事業、業務の改善を前提として、銀行借入を利息のみの支払として、年間1.5億円の元金返済をストップすることに成功した。

-(粉飾決算の開示)

本来は、大幅な粉飾決算があることから、銀行とのリスケ交渉が難航してもおかしくはない。しかし、一方で、銀行からしても倒産させても意味はない。第三者である私が入ることで、財務の健全化を約束し、同時に役員も大きく身を削る決断をして、会社が生き残れる可能性があるという計画を見せることができたからこそ、この交渉はうまくいったと言える。ただ、意地悪な銀行は勿論いた。最後まで責め立てられたが、社長と共に頭を下げ、誠心誠意の説明を繰り返し、最後の最後には認めて頂いた。この時の社長との苦労は忘れないだろう。

こうして、無事に当面の手形不渡り危機を乗り越えたのである。

-(手形のジャンプ交渉)

しかし、当社は、これだけの資金繰り改善効果を出してもなお厳しい状況に追い込まれた。その後も売上の減少が止まらず、当初15億円あった年商は、みるみるうちに7億円を切るような状態になってしまったからだ。そこで、やむなく次の策に打って出る。それは、メイン仕入先2社の手形を2億円分ジャンプするという、まさに暴挙に等しいことだった。当然のことだが、これに失敗すれば当社は倒産する。得意先が求める商品を提供できなくなれば、売上はなくなる。手形の決済を強行されれば不渡りが出る。そこまで追い込まれていた。相手は超大手の会社であるが、社長と共に腹を決め、綿密に計画を立てた後、手形のジャンプ交渉へ臨んだ。

仕入先の1社へ赴き、大きな会議室通され待っていると、仕入先2社の役員始め、各部の責任者が10名以上入ってきた。みな一様に厳しい表情を浮かべている。まずは、ご挨拶の後、私から口火を切った。現在の状態、経営改善計画の実行状況、銀行からの支援体制、さらに、今回の手形ジャンプをしていただいた後の返済方法と資金繰りイメージ。予想はしていたが、前例のない大きな特例を認める意味があるのか、この計画は本当に達成できるのかと責め立てられた。打合せは小一時間だったが、社長と私にはとっては長く厳しい時間が流れた。

結論はそこではでなかった。しかし、社長の根回し、練りに練った経営改善計画は共に身を結んだ。2週間ほど後、手形決済を間近に控えたタイミングで、手形ジャンプが認められたのだ。しかも、当初依頼通り、返済方法は超長期、かつ、これまで通りの仕入を認めて頂いた。今から考えても奇跡を手繰り寄せたとしかいいようがない。

抜本的な再生へ

資金繰りは一息ついてきたものの、まだ売上の減少は止まっていなかった。得意先の業績も悪くなる一方だったのである。当社としては、明らかな過剰債務と赤字からの脱出が何としても必要だった。今後の当社の存続と再成長を担保するため、より踏み込んだ計画作りが必要だったが、これは既に仕入先へのジャンプ交渉時に行っていた。

-(損益の改善策)

広告事業の売上減少が止まらないことはある意味で諦め、営業担当役員を実質更迭。むしろ、広告業の枠を飛び出し、得意先のコストダウンにもつながるサービスを商品化した。これは、過去に子会社で大失敗した事業の骨格を取り出し、加工したものである。社内の経営資源を改めて見直した時、その当時のノウハウと得意先がコストダウンを進めているという点と点がつながり、社長のトップ営業も相まって事業化できたといえる。この事業は、この時点で既に試用段階に入っていたため、積極的に人、お金等の経営資源を配分した。

6種類の決算書を作っていた会社再生事例図

-(過剰債務の改善策)

銀行に借入金の放棄をしてもらうという計画だ。具体的には、銀行から、サービサーという債権回収専門会社へと借入金を売ってもらうのだ。こうして売られた場合、仮に1億円の借入金があったとすれば、担保の有無や返済可能性などを加味して、大幅に低い金額で売却される。無担保だとすれば、500万~2000万円ほどと大雑把に説明しても差し支えないだろう。買い取ったサービサー側からすれば、これは商品の仕入れ。仕入値以上を回収しなければ損となる。ただ、逆に言えば、ある程度の利益を得られるならば、残りは放棄できる。

再生スキーム図

最後に

新規事業は順調に売上を伸ばし、広告事業も下げ止まった。こうして、様々な難局を乗り越えてきた当社は、遂に黒字化した。そして、銀行借入金のサービサーへの譲渡も進み、一部は借入金額の10%程度で買取りもできている。まだまだ、仕入先から支援を受けたものを戻すまでの道のりは遠いが、計画通りの返済は進んでおり、完全な再建までのイメージは固まっている。そして、万が一の場合に備え、最後の腹案も準備した。

月1回~3回の支援体制で、ここまで来るのに4年半。トータルで10億円を超える財務改善効果をもたらし、一連の再建策は終了した。やるべきことはあるが、その中身は明確であり、実行力も十分についてきた。社長も以前のようにお金に対する考え方は甘くない。そして、仕入先が実質的なスポンサーとして支えてくれているばかりか、人的な支援も行ってくれている。残る銀行借入金の買取りを進め、事業が完全に再建できることを信じて疑わない。 

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