黒字倒産とは?起こる理由や防止策、資金繰り表の活用方法などを解説

事業運営において利益が出ているのにもかかわらず、資金繰りの悪化を原因に黒字倒産する企業も少なくありません。実際に現在資金繰りに課題を感じており、黒字倒産を回避したいと考えている経営者もいるでしょう。
この記事では、黒字倒産の概要や赤字倒産・債務超過との違い、黒字倒産を未然に防ぐためのポイントを詳しく解説するのでぜひ参考にして下さい。
1 黒字倒産とは?

黒字倒産とは、自社の商品やサービスが売れて損益計算書上では利益が出ているのにもかかわらず、資金繰りの悪化により各方面への支払いができなくなり、倒産してしまうことを指します。
例えば、企業間取引の多くは売掛金が活用されており、自社の商品やサービスが売れた場合でも売り上げ金の入金はすぐには行われません。また、なんらかの原因で予定よりも回収が遅れるケースもあります。
それによって現金の入金と支払いのタイミングにズレが生じると「支払いのためのお金が手元にない」という状態になり、黒字倒産に追い込まれやすくなるということです。
2 黒字倒産と赤字倒産・債務超過との違い

黒字倒産と赤字倒産・債務超過にはどのような違いがあるのでしょうか。以下で詳しく解説します。
2-1 赤字倒産との違い
赤字倒産とは、損益計算書上で利益が出ていない状態で各方面への支払いができなくなり、倒産してしまうことです。赤字とは、収入よりも支出が多い状態で、つまり儲けが出ていません。
一方、黒字倒産は損益計算書上で利益が出ている状態でも、資金ショートが原因で事業継続が困難になる状態を指します。
2-2 債務超過との違い
債務超過とは、会社の資金や在庫などの資産よりも債務のほうが多い状態のことを指します。より簡単に説明すると、仮にこの状態で会社を清算すると借金が残る状態です。
貸借対照表上では、純資産がマイナスの財務状態ですが、債務超過だからといってすぐに倒産に陥ってしまうわけではありません。しかし、債務超過の状態が続いてしまうと、全ての資産を売却しても支払いができずに倒産のリスクが高まります。
3 近年の企業における黒字倒産の状況

東京商工リサーチの調査によると、2023年に全国で倒産した企業のうち68.0%の企業が直近決算の純利益が赤字であったという結果になっています。つまり、そのうち黒字で倒産したのは32%ということになります。
ちなみに、2021年の黒字倒産した企業の割合は39%、2022年は37.1%となっています。
この調査から、倒産企業においては赤字が多いものの、黒字で倒産してしまう会社も毎年一定数の割合で存在することがわかります。
4 黒字倒産はなぜ起こる?仕組みや主な原因

では黒字倒産はなぜ起こるのでしょうか?主な原因は以下です。
- 滞留在庫
- 売掛金の未回収・遅延
- 借入返済額の増大
4-1 滞留在庫
まず黒字倒産する原因として滞留在庫があります。在庫は抱えていても売れなければ現金化されません。つまり、長期的に滞留在庫の状態が続いていると、維持費などのコストがかかるだけで資金繰りが悪化します。
なお、滞留在庫は以下のような理由から発生します。
- 機会損失を回避するために大量の仕入れを行う
- 市場動向を考慮していない
- 在庫管理が甘い など
4-2 売掛金の未回収・遅延
冒頭でも触れていますが、ビジネスの取引において売掛金が活用されている場合、回収が遅れてしまうと支払い期日までに売り上げ金が入金されないという状態になります。
売掛金の回収の遅れは、取引先による事務上のミスや経営状態の悪化などによって起こります。また、自社でも請求書の発行漏れなどのミスがあると売掛金の回収が遅れてしまいます。
なお、取引先が倒産してしまうと売掛金の回収そのものが難しくなり、さらに黒字倒産のリスクが高まるといえるでしょう。
4-3 借入返済額の増大
銀行などからお金を借りていて、借入額よりも返済額の方が多い場合は資金繰りの悪化の原因になります。
この状態で売掛金回収の遅れなどとタイミングが重なることでさらに黒字倒産のリスクが高まるでしょう。
また、事業において設備投資のために銀行などからお金を借りた場合で、想定していたリターンが得られないと返済による支出だけが増えてしまい、資金ショートする可能性が高まります。
5 黒字倒産しやすい業種の例

黒字倒産になりやすい業種としては、まず支払いサイトが長い傾向のある建設業が挙げられます。建設業は、大規模工事が必要な案件では先行して設備や機器などの購入費、外注費、人件費を支払うケースが多く、工事が完了するまでの資金繰りが厳しくなりがちです。
他にも、大量に在庫を抱える小売業や卸売り業も黒字倒産になりやすいです。卸売り業の場合は、売掛金の利用が多く、未回収が生まれると資金繰りが悪化しやすいことも理由の1つです。
6 黒字倒産する会社と赤字でも倒産しない会社の実情
黒字でも倒産してしまう会社もあれば、赤字であっても倒産しない会社もあります。赤字でも倒産しない理由は、仕入れ先などへの支払いや借入金の返済を問題なく行えるだけの十分な資金を確保できているからです。また、必要な時に資金を調達できる体制やルートを既に確保できている状態にあることも理由として挙げられるでしょう。
つまりは、会社が倒産してしまう主な原因は資金ショートにあり、現状黒字、赤字の状態にかかわらず「手元に必要な資金を確保できているか」「今後も問題なく資金を確保できるか」によって会社を存続できるかどうかが変わってきます。
7 黒字倒産を未然に防ぐには?

黒字倒産を未然に防ぐには以下のような取り組みを行いましょう。
- 与信管理を徹底する
- 過剰な在庫を削減する
- 売掛金の回収期間の見直しをする
- 支払いサイトの見直しをする
- 資金調達の体制を整えておく
7-1 与信管理を徹底する
黒字倒産を防ぐには与信管理を徹底しましょう。与信管理とは、取引先から売掛金を回収できなくなるリスクを管理するための取り組みのことです。
取引開始前には、情報収集によって取引先の信用力を評価します。そして評価した信用力に応じて与信限度額の設定を行い、問題なければ取引を開始する流れになります。なお、与信限度額とは、取引先ごとに決定する売掛金の上限額のことです。
また、取引開始後は定期的に「取引先の業績に変化はないか?」「支払いの遅れは発生していないか?」などをチェックして、問題なく取引ができる状態を維持します。
7-2 過剰な在庫を削減する
過剰な在庫を抱えた状態が続いていると現金化が遅れてしまい、コストも増えてしまいます。そのため、在庫管理を徹底することも大切です。
在庫状況が適切かどうか把握するための方法として「交差比率」の活用が挙げられます。交差比率とは、在庫が効率的に売れているのかを知るための指標で以下の計算式で求められます。
交差比率 = 粗利益率 × 商品回転率
交差比率の見方は、交差比率が高いほど効率よく商品が売れてる状態であると判断でき、反対に低いほど売り上げが出ておらず、在庫が多い状態です。
一般的に200%以上の交差比率があると、儲けが出ているという目安になります。
7-3 売掛金回転期間の見直しをする
売掛金の回収期間が短いほど資金繰りを楽に行え、状況の改善にもつながりやすいです。
そのため、取引先と契約条件の見直しを行い、売掛金の入金を早めてもらえるか交渉すると良いでしょう。全額の入金が厳しい場合は一部前払いで対応できるか交渉するのも1つの方法です。
7-4 支払いサイトの見直しをする
黒字倒産を防止するためには、売掛金回転期間だけでなく、仕入債務回転期間(支払いサイト)の見直しも行いましょう。
仕入債務回転期間とは、仕入れ先に商品の代金を支払うまでの期間を指し、この期間が長いほど資金繰りは改善しやすくなります。
交渉においては、支払い期間を遅らせられるか、または分割払いにしてもらえるかを依頼します。
なお、売掛金回転期間と仕入債務回転期間の交渉においては、自社の条件を一方的に突きつけてしまうと取引先との信頼関係が損なわれてしまう可能性があるため、双方が納得いく形で進めなければなりません。
7-5 資金調達の体制を整えておく
資金ショートを回避するには、必要な時に必要なだけ資金を調達できる体制・ルートを事前に構築しておくことも大切です。
「資金がショートしてから資金調達を検討する」では、対応が遅いといえます。例えば、資金が不足しているタイミングで売掛金の回収の遅れなどが重なるとさらに黒字倒産のリスクが高まります。
そのため、資金に余裕のあるうちから金融機関との関係性を強化する、複数の金融機関との取引を行うなどを検討しましょう。
なお、資金調達は金融機関からの融資以外にもさまざま方法があり、できるだけ多くの選択肢を持っておくことをおすすめします。詳しくは以下の記事で解説しています。
法人向け資金調達の方法11選!資金繰り改善におすすめの手段も紹介
7-6 金融機関にリスケを依頼する
ここまで挙げた黒字倒産を防ぐ方法に全て取り組んでみて、それでも状況が厳しいようなら金融機関にリスケジュールを依頼してみましょう。金融におけるリスケジュールとは、元金返済の減額や停止などを金融機関に交渉する行いです。
例えば、毎月の借入金の返済額が50万、100万円であっても、一定期間利息のみの支払いにしてもらえるよう交渉します。
金融機関にリスケジュールを依頼すれば、一時的に支払いの負担を減らせるため、その期間に事業の立て直しなどに注力できます。
とはいっても、金融機関のリスケジュールについてスムーズに行えるか不安を感じる経営者も多いでしょう。外部のコンサルタントの協力を得れば、交渉をサポートしてくれます。
8 黒字倒産を回避するための各書類の活用方法

黒字倒産を回避するためには以下の書類をうまく活用しながら適切な対策をとることも大切です。
- 資金繰り表
- 貸借対照表
- 損益計算書
8-1 資金繰り表
資金繰り表とは、一定期間における会社の資金の流れを表でまとめた書類のことです。会社の状況にあわせて資金繰り表を作成すれば、現状手元にある資金の把握や、将来のお金の出入りの予測が可能になるため、事前に資金ショートを防ぐための対策を検討できます。
例えば、現状売掛金の回収が期日よりも数ヶ月後になり、支払いが厳しくなりそうであれば必要なだけ資金を前もって調達しておくという対策をとれるでしょう。
資金繰り表は一般的に月単位で作成します。しかし、現状の資金繰りが厳しい場合は日繰り表を作成して細かに資金の動きをチェックし、早急に対策を検討することをおすすめします。
資金繰り表の具体的な作成方法や見方は以下の記事で解説しているので、こちらも確認しておいて下さい。
資金繰り表とは?種類やメリット、作り方を初心者にもわかりやすく解説
8-2 貸借対照表
貸借対照表とは、会社の資産と負債の状況をまとめた書類で自己資本比率を把握する際に活用できます。自己資本比率とは、会社が持つ純資産と負債のバランスをチェックするための指標のことで以下の計算式で求められます。
自己資本比率(%)= 純資産 ÷ (純資産+負債)× 100
一般的には自己資本率が50%以上あれば状態としては良好だといわれています(※業種によって異なる)。中小企業の場合は、30%以上あれば安定企業だと考えて良いでしょう。参考までに中小企業庁の調査によれば、中小企業の自己資本率の平均は41.71%となっています。
また、売掛債権回転日数や在庫回転日数も把握しておくと良いでしょう。売掛債権回転日数とは、売掛金を回収するまでの平均期間を測るための指標で、以下の計算式で求められます。
売掛債権回転日数 = 売掛債権 ÷ (売上高 ÷ 365日)
売掛債権回転日数が短いほど現金をスムーズに回収できていると判断できます。
また在庫回転日数は、対象となる在庫がどのくらいの日数で入れ替わっているかを示す指標です。以下の計算式で求められます。
在庫回転日数 = 棚卸資産 ÷(売上高 ÷ 365)
在庫回転日数が短いほど効率よく売り上げを上げられていると判断できます。
8-3 損益計算書
損益計算書とは、会社の一定期間における「収益」「費用」「利益」が記載された書類で、収支のバランスを見極める際に活用できます。
例えば、売り上げが出ていても費用が多くかかっている場合は利益率が低いと判断でき、コスト削減などの対策が必要です。
なお、損益計算書上で利益が出ていたとしても資金ショートによって黒字倒産が起こる可能性があるためそれだけで安心してはいけません。また、損益計算書のみでは棚卸資産の在庫管理はできないため、資金繰り表や貸借対照表もあわせて活用しながら会社の状況を俯瞰的な視点でチェックしましょう。
9 黒字倒産の防止や資金繰り改善なら外部コンサルタントへの相談もおすすめ

黒字倒産の防止や資金繰りの改善なら外部コンサルタントへの相談がおすすめです。コンサルタントに相談するメリットは以下の通りです。
- 自社の課題を正確に把握できる
- スムーズな資金繰り改善につながる
- 融資のサポートを受けられる
- 精神的なストレスが緩和される
9-1 自社の課題を正確に把握できる
資金繰りに課題がある際には、焦りやプレッシャーから経営者自身では会社の問題点を冷静に分析できない場合も多いでしょう。
外部コンサルタントに相談すれば、プロの視点から自社の課題点を洗い出してくれます。
「なぜ資金繰りが悪化しているのか?」という根本的な原因を発見できるため、適切な対策をとることが可能です。
9-2 スムーズな資金繰り改善につながる
外部コンサルタントへ相談すれば、課題の発見だけでなく、今後どのような道のりを辿れば状況を改善できるかという具体的なアドバイスをもらえます。
自己判断で動いてしまうと経営上間違った行動をとってしまう可能性もあります。定期的にコンサルタントに会社の状況をチェックしてもらい、その都度適切なアドバイスをもらえれば方向性がブレることなく、スムーズな改善につながるでしょう。
9-3 融資のサポートを受けられる
融資のサポートも受けられるケースも多いため、金融機関に提出する書類作成や交渉を支援してくれます。プロのアドバイスをもとに手続きを進められるため、融資の成功率を上げられるでしょう。
また、現状銀行に対する返済が厳しい状況であれば、リスケジュールの交渉も行なってくれます。
9-4 精神的なストレスが緩和される
資金繰りの課題があると経営者は一人で悩みを抱えてしまうケースも少なくありません。しかし、一人で悩みを抱えてこんでしまうとストレスが溜まるだけで、状況の改善も見込めません。
コンサルタントに会社の状況を聞いてもらい、アドバイスをもらえれば改善策を発見でき、精神的なストレスの緩和にもつながるでしょう。
初回無料相談を実施しているコンサルティング会社であれば、気軽にお話ができるためぜひ検討してみて下さい。
10 資金繰りの課題を抱えているならリンクソートコンサルティング

資金繰りの課題を抱えているならぜひ私たちリンクソートコンサルティングにお任せ下さい。
私たちは実績数1,000社以上、国内トップクラスの実績を誇り、多くの中小企業の事業再生を支援しています。
初回120分の無料相談を実施しており、じっくり集中してお話できる環境でまずは貴社の資金繰りの状況を詳しくヒアリングします。その後、状況にあわせた再生までの道のりを提示し、資金繰りの課題を根本から解決します。金融機関との資金調達交渉や、状況に応じて豊富な専門家ネットワークとの連携も可能であるため、ぜひお気軽にご相談下さい。
まとめ 適切な資金繰りで黒字倒産を未然に防ごう
会社で利益が出ていたとしても資金繰りの悪化によって黒字倒産が起こる可能性があるため、常に必要な資金を手元に確保しておく取り組みが必要になります。黒字倒産を防ぐには、与信管理を徹底する、在庫状況の見直すなどの対策を行うことが大切です。
私たちリンクソートコンサルティングでは、中小企業の資金繰りの改善・事業再生を支援しています。資金繰りを適切に行い、黒字倒産を防止したいとお考えの経営者はぜひお気軽にご相談下さい。