必見!銀行融資リスケのメリット・デメリットに5つの注意点を解説
こんにちは。
資金繰り・事業再生の専門家、道家健一です。
先日電話で相談を受けていた時の事です。
私が思わず「リスケはしていますか。」と当たり前のように質問してしまったのですが、
その時返ってきた言葉が「リスケってリスケジュールのことですよね?銀行融資の返済を止めること
ですよね?」でした。
多くの社長にとって”リスケ”は初めてのことなのに、配慮が足りなかったと反省すると同時に、
よく考えてみると、言葉は知っていても実務的にはよくわからないという方も多いと思いましたので、
今回はリスケジュール(以下、リスケという)についてお話ししていきたいと思います。
そもそもリスケって何?
ビジネスの会話の中でも「リスケしてもらえませんか?」というような使い方がされていると思います。
この意味するところは、「元々のスケジュールを変更してもらえませんか?」ということです。
金融の世界でもこの用語を使うのですが、その意味は、以下の通りです。
リスケジュールとは、業績が悪化している時に、銀行借入の元金返済を減額又は停止する手続きのこと。
その効果は元金返済額を最大0円にすること。
例えば、月額の返済元金が100万円だとしても、1億円だとしても、最大で0円、利息の支払いのみにできるのです。
既に新規の銀行融資が受けられない会社にとっては、実質的に、有力な資金調達の選択肢となります。
仮に毎月の元金返済が100万円として、1年間返済を止めれば、1,200万円の調達効果を得ることと同じだということです。
まずは、このような考え方があるということを押さえておいてください。
リスケのメリット・デメリット
リスケのメリットは、何といっても資金繰りが良化する事です。
元金返済0円は最大2年が基準となりますが、その後も、その時の会社の収益力=返済能力に応じた返済
をすることも可能です。
一方、リスケのデメリットは、信用悪化です。
銀行から新たな借入をすることができなくなります。
(但し、業績が回復していけば新規融資を受けることができるようになりますし、リスケ中に融資を受けられるという例外もあったりはします。)
また、経営計画の作成が必要となったり、定期的な銀行からのモニタリングがあるなど、手間と時間がかかることは覚悟しておいてください。
そうだとしても、状況次第では、余りあるメリットのある制度だと言えます。
リスケを行う上での5つの注意点
リスケを行う上で5つの注意点をお話していきたいと思います。
1.目的意識を明確にする
銀行融資の返済ができないからリスケをする、ともかく資金繰りが悪いからリスケをするということ
でもいいのですが、いざリスケできてしまうと、それだけで安心してしまう社長が少なからずいます。
しかし、そのままではもちろんだめで、正常な返済ができるように収益力を上げていかねばなりません。
(当然、銀行も返済するようにいずれ迫ってきます)
大半の会社が赤字であることもありますが、リスケは黒字転換までの時間稼ぎ
という目的意識を明確に持つことが一番大切だと思っています。
そう考えて、資金繰り予測も立てて逆算していけば、リスケしたところで、
このままではいずれ資金がなくなるということは明らかであり、リスケしたからといって
安心などしている暇がないことに気付けるはずです。
2.頑張り過ぎる前に、早めのタイミングで
仕入、外注の未払いが発生していたり、高金利の借入をしてからのリスケでなく、
もっと早いタイミングでリスケを考えていただきたいと思います。
借りたものは返すというのは当たり前ですが、例えば、仕入・外注の未払いが発生すれば、
信用問題から取引に支障が出てしまいかねません。
「銀行から借入できなくなれば倒産してしまう、だから何としても払うのだ。」という
そのような気持ちもわかりますが、ここは冷静に判断していただきたいと思うのです。
迷いがあれば、そこはもう専門家に相談してください。
3.必ず経営改善計画を作る
どうすれば黒字転換できて、資金が廻るようになるのかを可視化する事が大切です。
銀行によっては、この経営改善計画を求めない場合もあるのですが、そうした会社ほど
経営改善に取り組まずに、そのまま経営が悪化しているように思います。
リスケの前には、会社と向き合って、どのように経営改善していくかを考え、
書面にまとめるということが必要であり、まさにそのタイミングなのです。
4.銀行の言うことを安易に受け入れず交渉する
銀行側は少しでも資金を回収したいため、定期預金などがあれば、それを返済に廻せと言ってきたり、
追加担保要求・金利アップ要求などをしてくることもあります。
しかし、必ずしも銀行の言うとおりにする必要はありません。
これらはお互いの話し合い、合意によって成立するものですので、銀行の言うことを安易に受け入れず
交渉してみて下さい。
ただし、お互いの合意であるということは、銀行の意見を突っぱねすぎても、うまくはいかなくなる
ということにも注意は必要です。
5.粉飾決算がある場合は専門家に相談
粉飾決算で融資を受けていた会社が、急にリスケに来たとしましょう。
銀行側は、業績が良いと思って融資をしていたのに、とても驚くことになります。
そして、当然の話しですが、「なぜ急に資金繰りが悪化したのか?」
ということの説明を求めてくるでしょう。
これをうまくやらないと「今まで騙していたのか!」と言うことで大ごとになり、
まとまるものもまとまらないということになりかねません。
こういったケースは、迷わず専門家へ相談に行く事をおすすめします。
リスケを行う前に最もよく聞かれる質問
ちなみに、ほぼ間違いなく聞かれる質問にも回答しておきたいと思います。
それは、「リスケした情報は得意先や取引先に伝わったりしないのか?」
ということです。皆さん心配して聞かれます。
私は1,000社以上の中小企業を支援してきましたが、ここで断言します。
そうしたことは、一度もありません。
情報流出があるとすれば、社長が自分で話すか、興信所に決算書を開示している会社であれば、
その流れで発覚してしまう場合があるかもしれません。
まとめ
最後に、どんな会社がリスケに取り組むべきかをお話ししてまとめたいと思います。
銀行から借入ができなくなっていて、資金繰りが厳しくなってきた会社は、
間違いなくリスケを検討すべきです。
繰り返しますが、リスケをしたからといって、二度と融資が受けられないわけではありません。
大切なことは、少しでも足元の資金繰りを安定化させ、黒字転換までの時間を稼ぐことです。
そして、社長が経営改善に注力することなのです。
そうは言っても色々な不安があるかと思います。
何か悩みがあったら、ともかく専門家へ相談してみて下さい。
それによって、視野が広がったり、気付けていないことに気付けたりするかもしれません。
今日のお話が、あなたやあなたの周りにいる元気のない中小企業に 少しでもお役に立てる話
であればうれしく思います。