リスケするつもりで相談したら、赤字・債務超過の会社が新規融資を借りられたワケ
こんにちは。
資金繰り・事業再生の専門家、道家健一です。
今回は、事業承継したばかりで、経営に不安を抱えていた社長のお話しをしたいと思います。
当社の社長は、創業者から承継した2代目社長でしたが、身内ではなく、それまで役員として実務を担ってきた第三者の方でした。
そんな社長であるだけに会社の内情はよく知っているわけですが、肝心の承継した会社は、赤字かつ債務超過であり資金繰りが楽と言えるような状態でもありませんでした。
そんな中、ある決定的な出来事が起き、資金繰りが一気に悪化します。
社長は、いよいよ銀行への元金返済ができなくなるだろうと思い相談に訪れたのですが、そこで私がお伝えしたのは「融資に挑戦しましょう!」 という、社長には意外な回答だったのです。
なぜ赤字で債務超過かつ銀行への元金返済の停止交渉(リスケジュール)を覚悟してきた社長に対して、融資に挑戦しましょうと言えたのか、社長がここに至るまでの経緯も含め、お話ししていきたいと思います。
4期連続赤字の会社を承継
ご相談いただいた会社は、ざっくり年商1億円くらいの建設業でしたが、4期連続赤字、債務超過という状態であり、決算書の見た目で言えば、非常に悪いと言わざるを得ませんでした。
なぜここまでの状況になってしまったのかを聞いてみると、創業者である前社長が事業拡大のために出店したのが始まりで、そこで思うような売上を出すことができず、初期投資も膨らみ、結果このような状態になってしまったということでした。
前社長は会社を畳もうともしたようですが、現社長が以前勤務していた会社から引っ張ってきた社員達が複数人居たこともあり、やむを得ず、株を買い取る形で事業を承継することになったのでした。
この時、前社長も残る形となり、それなりの給与を払いながら事業を継続していくことになります。
急激に資金繰りが悪化。その要因は何と・・
社長は、そもそも「銀行との付き合い方がよくわからない」とうい問題を抱えていましたが、メインバンクの担当者が良い方だったこともあり、なんとか資金繰りを廻せていたようです。
しかし、新型感染症融資の返済も始まっている中、借換えや追加融資は受けられていません。
その結果、収益力以上に返済が進み、会社の現預金は大きく減少していきました。
そして、予想もできないようなことが起きたのです。
キャッシュが減り続けていくという現実を見た「前」社長が、自分が以前から会社に貸していたお金を「現」社長には何の断りもなく、勝手に会社の銀行口座から引き出して回収してしまったのです。
そのタイミングの当社から見れば、それは非常に大きな金額でした。
会社のお金を前社長が引き出せる状態にしておいたことも悪いのですが、既に前社長の会社ではない以上、現社長の許可もなく勝手に会社のお金を引き出したことは大きな問題です。
法的な措置も考えられるというような状況ですが、ともかくお金を作らなければなりません。
こんな時に限って、人材確保のために外国人留学生の受け入れが決まっており、まとまったお金が出ていくことにもなっていました。
そして、資金繰り表を作ってみた結果、なんと3ヶ月後には資金ショートが予想されていたのです。
何とか融資でつなぐしかない、そう思っていた矢先、今度はメインバンクの担当者の転勤に直面します。
後任と話をしようにも、そもそも銀行とどのように付き合っていけばいいかわからなかった社長は、そこからはもう夜も眠れないという状況が続く中で、リスケジュールをすべきかどうかと思い悩みご相談にいらしたのでした。
なぜ赤字・債務超過の会社に資金調達を仕掛ける判断をしたのか?
ご相談に応じていく中で、決算書や試算表などの財務諸表を見ながら分析を進めました。
特に気になったのは赤字要因です。これを見ていくと、確かに出店した新店の採算が悪いという要因はあったものの、
主な赤字要因は過大な設備投資
ということがわかりました。
そして、この過大な設備投資という要因を排除すれば、
事業全体としては利益を生んでいる
ということも明確にできたのです。
さらに、その問題の設備ですが、現在のインフレ市況の中で時価換算すると、高値で売れるということもわかってきました。
設備を時価換算すると債務超過も解消するレベル
なんと、仮に全ての設備を売却すれば借金を完済できる可能性すらある、そんな状況だったのです。
具体的な資金調達のアクション
こうして財務分析を進めた結果、十分に資金調達の可能性があると判断できたものの、足元の資金繰りは厳しかったため、まずは資金調達にチャレンジできるだけの時間があるかの見極めを行いました。
具体的には、作成されていた資金繰り表の通りにキャッシュが推移するのかどうか、逆に言えば、より短い時間で資金ショートが起きないかどうかの見極めです。
同時に、申し込むべき銀行を選定し、資金調達における重要ポイントも明確にしました。
それは、
- 実態の財務状況(つまり、見方によっては債務超過ではないということ)を示す
- 過去の赤字要因と実態の収益力を示す
- 経営計画を作成し将来の見通しを示す
これらを一つ一つ形にしていった結果、ご相談時にリスケすべきかと悩んでいた社長は、2ヶ月後に、新規の銀行から融資を獲得。
手持ちキャッシュは3倍になり資金繰りが一気に安定化しました。
現在は、それこそ腰を据えて、組織体制の強化、より大きな黒字を出すためのアクションに移っています。
この事例を通じて、私も改めて思ったことがあります。
それは、素人判断で進めてはいけない場面があるかもしれないということです。
もし仮に実態も赤字で資金ショートが見えていたらどうしたか
これに対する答えは、銀行に対して、元金返済の減額交渉(リスケジュール)を実施するということになっていたと思います。
当社は既に社長が覚悟を決めていただけにスムーズだったと思いますが、資金繰りが悪いと思っていても、リスケしようとすぐに決断できる社長は稀です。
最後の最後までがんばってしまい、リスケ前に様々な資金繰りの手立てを使い切ってしまう方をよく見かけます。
すると、やっとの思いでリスケしたとしても、黒字転換するまでにかかる時間を凌ぐキャッシュがないということになってしまう可能性が高くなってしまうのです。
そんなことにならないためにも
- 2期以上の連続赤字
- 債務超過(仮に今会社を清算すれば借金が残る状態)
- 借入が月商の6ヶ月以上
この3点で、2つ以上当てはまる方は、今すぐ無料相談にてご相談ください。
未来へ向けて・・
ちなみに、当社はまさにここからが本当の意味での事業承継であり、本格的な経営改善のスタートということなります。
少なくとも
- 前社長との決別
- 出店に失敗した店舗をたたむ、それに応じた人員の削減
- 部門別損益管理表を作成するなど、社長がスムーズに経営判断できる状態を作る
- 新たに始めた事業部門の売上を伸ばす
など、やるべきことは山積しています。
融資獲得後、社長とお話させていただきましたが、明るい声で、
「うちはだいぶ長く付き合ってもらうことになるから覚悟しておいてくれ!」
とおっしゃっていただきました。
私もそれに対して、「臨むところです!」と。
人間味溢れる社長であり、これからの事業拡大にも期待が持てると思っています。
私たちも後ろでしっかりと支えながら、共に経営改善を進めていきたいと思います。
まとめ
今回お伝えしたかったのは・・
- 赤字で債務超過だとしても借入できるケースもある
- 全ては決算書などの財務諸表を深く読み込めるかどうかにかかっている
ということでした。
この事例では、表面的に赤字かつ債務超過でしたが、実質的には利益が出ており実態ベースでは資産超過と判断できたことが融資獲得に至ったポイントです。
しかし、分析の結果、仮に実態も赤字で資金ショートが見えているとしたら、私は迷わずすぐにリスケを提案し実行に移していたと思います。
特に、資金繰りが悪化している場面では、リスケをすべきか資金調達かの難しい判断を迫られることもあると思います。
どうすべきかと悩んだら、お気軽に弊社の「無料相談」をご利用ください。
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まだまだ苦しい状況が続いている方も多いと思いますが、一緒に乗り越えていきましょう。
応援しています。