コロナ長期化における第4の選択肢「資本性劣後ローン」とは

 

こんにちは。
資金繰り・事業再生の専門家、道家健一です。

政府が中小企業の資金繰り支援策として出しているものには、

1.助成金や給付金
2.コロナ融資
3.税金や社会保険、銀行借入の延べ払い(リスケ)

という大きな効果を生むものが3つあります。しかし、これらを全て利用しても、既に現時点で資金繰りが厳しいという業界があります。私たちが見ている範囲では、やはり、飲食関連がダントツです。飲食業、食品卸売業、食品製造業辺りでしょうか。もちろん、他にも、宿泊業、アパレル業、イベント業など様々な会社が苦しんでいます。

それでいて、現在の情勢を見ている限り、コロナの影響はまだまだ長引きそうです。上記3つの支援策を全て利用しても、既に資金繰りが厳しい方、今は大丈夫としても、今後どうなるかわからない、そう思っている方に向けて、今後どうやって資金繰りを廻していけばいいのか、そのヒントになればと思い今回のコラムを書きました。
 

当初の想定より売上の回復が遅い・・

 
コロナの影響が当初の想定以上に長引いていると感じる会社が、大幅に増えてきているのではないでしょうか。それもそのはずで、当初コロナ融資を受けた際には、おおよそ影響が半年~1年続くという前提で、融資を受けた方が多かったと思います。

保証協会が付かない銀行独自の融資(プロパー融資)も、緊急性が高かったとはいえ、1年以内の短期が多かったため、既に借換えをどうするのかという検討が始まっています。

コロナの影響が長引いてきた中、中小企業は、今後の資金繰りをどのように考えていけばよいのでしょうか。

事業再生を専門とする私たちは、以下のようなイメージで動きをとっています。

 

アクション1:追加のコロナ融資を申し込む

 
コロナ融資に関して、保証協会、日本政策金融公庫(旧中小企業金融公庫、旧国民生活金融公庫)、商工中金の全てに当たり尽くしたのか?既に融資を受けているとして、全ての枠を使い切っているのか?と考え、申込みを行います。

それらに当たり尽くしているとすれば、各社での2度目のコロナ融資の申請になります。1回目は売上減少の基準を満たしているだけでOKのような感じでしたが、ここからはある意味普通の審査に近くなり、“返済可能性”を重視するようになると思ってください。

つまり、経営改善計画書を添付した方が良いということです。どうやって返済していけるようにするのか、そのための方法とその結果としての損益イメージ、資金繰り予定表などが必要になります。

通常、申込んで断られると“3ヵ月~6ヵ月は申込が難しい”状態になりますので、事前準備をしっかりとして臨むようにしてください。

 

アクション2:各種支払いの繰り延べを行う

 
既に、税金や社会保険の支払繰り延べを行っている会社も多いと思いますが、一方で、融資を受ける上で支障があると嫌だという理由から、これらの繰り延べ払いを行っていない会社もあるようです。

しかし、税務署、年金事務所と合意の上での支払繰り延べであれば、融資の申込は可能ですし、現実として審査にも通っています。ということで、コロナ融資があっても資金繰りが厳しいとすれば、躊躇なく税金と社会保険は止めにいきます

私たちは、1年以上先も見据えて資金繰り計画を立てますが、コロナ融資と税金、社会保険の支払繰り延べをセットにすることなどもざらにあります。

また、支払いの繰延べで大きな効果を発揮するのは、銀行融資のリスケ(元金の返済額を減額)です。これについても、融資を受ける上で支障があると嫌だという理由から、徹底して避けて考える社長がいらっしゃるのですが、助成金や給付金、コロナ融資を受けて、それでもなお資金が厳しいとすれば、会社がつぶれるよりはましだと思って実行すべきです。

払えなくなって延滞するより、事前に制度を使ってリスケした方が信用も保たれることになりますし、業績が良くなれば再度融資を受けることも可能です。

取引銀行も、赤字が膨らみ、税金、社会保険の未払いも増え、売上回復の見通しが立たないとすれば、徐々に前向きな支援が難しくなっていくはずです。得意先である中小企業を支えたいところでしょうが、リスケしてもらうしか選択肢がない、という場面が増えてくることも十分考えられます。

ちなみに、私たちは、既にコロナ融資のリスケも始めていたりします。
 

アクション3:第四の選択肢へのチャレンジ

 
助成金や給付金、コロナ融資、税金や社会保険の支払繰り延べをやりつくして、それでもキャッシュがないということは、間違いなく“赤字”のはずです。それもかなりの額になってきているのではないでしょうか。

すると、銀行も徐々に融資がしづらくなっていき、先程お話したように、リスケしかないということになっていくわけです。赤字であるがゆえに、銀行が融資しづらいという問題と、それでも新たなキャッシュが必要だという、この2つの問題を同時にクリアするハイブリッドな方法があります。

それが、第四の選択肢、資本性劣後ローンです。

 

資本性劣後ローンのメリット・デメリット

 
早速ですが、この資本性劣後ローンの5大メリットを挙げておきたいと思います。

資本性劣後ローンの5大メリット

 
1.融資だからシンプルにキャッシュが増える!
2.融資なのに資本金と見做せる特別な商品(=他の融資も受けやすくなる!)
3.返済期間が最大20年かつ一括返済(=資金繰りにも好影響!)
4.資金使途が自由(=コロナで膨らんだ借金返済にも使える!)
5.コロナ融資とは別枠(=コロナ融資を借りていてもOK!)

これを見ていただいてわかると思うのですが・・、
すごいですよね。

というか、喉から手が出るほど欲しい!そう思う経営者も多いはずです。

ただ1つよくわからないものがあると思います。「融資なのに資本金と見做せる?」という部分。なので、こちらを簡単に説明しておきたいと思います。

この融資は、仮に融資した会社が倒産した場合、他の融資の回収よりも回収が劣後する、つまり後回しになるという条件が付いているのです。しかも、長期の一括返済という特性もあるため、金融庁が銀行に対して、『資本金と同様に見做しても良い』、という特別なルールを設定しているということなのです。

よくわからないという方は、それでもいいです。ともかく、この資本性劣後ローンを受けられれば、お金も増えるし、他の銀行からの融資も受けやすくなる!と覚えておいてください。

そして、デメリットがないのか?という疑問にもお答えしておきたいと思います。もちろんあります。

 

資本性劣後ローンの5つのデメリット

 
1.融資対象に縛りがある(※1)
2.しっかりとした資料作成が必要になる(審査の為の経営計画書+定期的な状況報告等)
3.融資を受けるまでには時間がかかる(計画作成・メインバンクとの連携・審査)
4.金利が高くなりやすい(業績連動金利:業績良いと年率3~6%程度と高く悪いと低い)
5.一括返済資金の確保(=一括返済のためその完済資金をどう確保するか計画性が必要)

※1:融資対象は大きく2種類。1)公的な支援(出資・再生支援)を受けている会社か、2)認定支援機関の指導を受けるなどして事業計画を作成し、既存銀行の支援も受けられる会社(認定支援機関とは、国の認定を受けた税理士やコンサル会社など。弊社もその1社です。)

当たり前の話ですが、融資は給付金・助成金ではありませんから、銀行からすれば返済してもらわなければ儲けを出すことができません。そのため、根本的な話をすれば、現在のような厳しい状況であったとしても、これからこうして返済をすることができる、という絵図が必要です。

この絵図が最も重要になるのです。

ちなみにですが、私たちの中では、年商数千万円の会社にこの融資を入れたことはないのですが(依頼を受けたことがない)、年商1億円ちょうどくらいの会社に5000万円の資本性劣後ローンを入れたことがあります。

融資のための準備が相応にかかることも踏まえると、年商の縛りがあるわけではないものの、やはり年商1億円以上くらいからの会社向けなのかなと思います。

 

まとめ

今回のコラムの中でお伝えしたかったのは、コロナ融資を借りても資金繰りが安定化しない時の資金繰りの考え方についてでした。

給付金・助成金とコロナ融資を得ても厳しい場合は、

1)追加のコロナ融資を申し込む
⇒保証協会・日本政策金融公庫・商工中金の全てに申し込む
⇒各社へ二回目の融資を申請する(二回目は厳しくなるので計画を作るなど準備が重要)

2)税金・社会保険のリスケを申請する
⇒緊急性が高ければ上記1)に優先する

3)資本性劣後ローンの申込みを行う
⇒日本政策金融公庫・商工中金のどちらかへ申し込む
⇒準備に時間がかかるためゆとりをもって対応する

4) 銀行融資のリスケを申請する
⇒緊急性が高ければ上記1)に優先する

の順に対策を打っていくと良いと思います。

上記の通り、緊急性が高い場合は、ともかく調達よりもリスケです。下手をすれば、仕入や外注費の支払いすら難しいという会社もあると思います。このように緊急性が高く、諸々の経営判断が難しい、という場合は、できるだけ早く専門家へ相談してください

そして、第四の選択肢である資本性劣後ローンは、「純粋にキャッシュが増える」×「他の融資も借りやすくなる」というハイブリッドな融資で、返済も最大20年後の一括、資金使途が自由であることからも、次の2つの場面で利用価値が高いと思います。

赤字で債務超過目前の場面(仮に清算したら借金が残る状態になる目前)
⇒引き続き既存銀行の支援を受けるための借入と考える
黒字転換が見えてきた場面
⇒コロナで膨らんだ借金を返すための借入と考える

どちらの場面にも当てはまらない、例えば、既に債務超過で黒字転換が見えていないという場合であれば、少なくとも黒字転換させるイメージを作ることです。

いずれにしても、経営計画の実現可能性が高いかどうか、借りても返せるのか、この説得力次第です。

まだ先の見えない状況ですが、あらゆる選択肢を頭に置きつつ、なんとしてもこの場面を切り抜けていきましょう!応援しています。

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