コロナ禍で膨らんだ借金の出口戦略、資本性劣後ローンの活用
こんにちは。
資金繰り・事業再生の専門家、道家健一です。
コロナ禍で、コロナ融資、コロナリスケ(銀行借入の元金返済猶予)、税金や年金の支払猶予などを
使い倒して、今や借金の総額が膨れ上がっているという中小企業が増えてきていると思います。
これらの借金は、返済猶予もあるわけですが、1年後、2年後には大半の返済が始まってくるはずです。
特に、税金や年金の支払を1年後に繰り延べている方などは、いきなり1年後から通常の支払い分も含めた
倍額を払わなければなりません。
回復傾向にはあるとはいえ、今の売上や利益で返済が始められるでしょうか?
「いやいやそれはきついよ。」という声が多く聞こえてきそうです。
黒字化の努力はしているにしろ、そうそう簡単には売上が戻らない会社も多いはずです。
ではどうするのか?
今回は、そのためのヒントになるかもしれない、そう思ってコラムを書かせていただきました。
テーマは、「出口」です。
私たちの顧問先の中には、このテーマを語るにふさわしい会社があります。
1ヶ月後に手形の不渡りが確定していた会社でしたが、2年後には、創業来過去最高益を達成すると同時に、
銀行から新規融資1億円を獲得し、無事に事業再生を果たした会社です。
この事例の中に、「コロナの出口」につながるヒントがあると思っています。
特に、後半部分にそのヒントが出てきますので、最後までお付き合いください。
それでは、早速、具体的に何をしてきたのか、お話をしていきたいと思います。
ここに至るまでの経緯
今回ご紹介する顧問先A社は、営業が大得意な社長が創業された業歴20年超、年商10億円ほどの建設業の会社です。
ご相談にいらした際は、粉飾決算があり、実態は赤字、既に借入ができない状況に至っていました。
そして、何より1ヶ月後には手形の不渡りがでてしまう、というところまで追い込まれていたのです。
なぜここまで追い込まれてしまったかというと、粉飾決算にも一因がありました。
ある時、まともに決算をすると赤字になってしまうというタイミングで、原因究明や改善に取り組むのではなく、粉飾決算に手を染めてしまいました。
その焦りもあり、社長は、今まで以上に売上を上げなければと、さらに営業活動のアクセルを踏んだのです。
3つの資金繰り悪化要因
しかし、この判断が、より一層資金繰りを悪化させていくことになります。
まず、仕事が増加したことに伴い、これまで以上に社内は混乱し、ミスやモレ、クレームが多発し、そもそも赤字の状態だったところから、さらに赤字が拡大していきます。
そして、業界柄先に払う費用もあるわけですが、売上が増加していくため、出ていくお金も増え、手元のお金は減っていきました。こうした中で、綱渡り的な資金繰りを銀行に支えてもらいますが、それも限界となり、ついには、手形の決済資金も手当てできない、というところまできてしまったのでした。
倒産寸前からどうやって復活していったのか
この会社がどうなったのかと言うと、ご相談を受けてから2年後に、創業来過去最高益を達成すると同時に、銀行から新規融資1億円を獲得するに至りました。それも、この2年間、銀行には1円の元金も返済していなかったのにです。
具体的に何をしたかというと・・
1)資金繰り改善
まずは、兎にも角にも足元のお金を増やさなければいけません。でないと不渡りが出て倒産してしまうからです。そのため、ノンバンクから資金調達、銀行からの借入金のリスケジュール(元金の返済を2年間0円)、得意先への一部先払い依頼、仕入先への支払繰延交渉と、ありとあらゆる資金繰り策を講じて、手形を決済すると同時に、経営改善を進めていくための時間を確保しました。
2)事業の黒字化
次に行ったのが粗利の改善です。当社には、多すぎる量の仕事と、ずさんな管理体制という問題があり、利益を確保できていませんでした。そこで、多くの経営者が行うことと逆のこと。受注の制限(=売上を下げる)を行うと同時に、個人任せの現場管理を中央集権型管理へと転換し、リストラなどをせずに初年度から黒字化に成功。翌年には、売上が昨対比30%近い減少にも関わらず、創業来過去最高益を上げるに至ったのです。
3)借金問題解消
最後の仕上げが、再び銀行から融資を受けられるようにすることです。これは、これまで払ってこなかった
既存の融資と、成長のための新規融資の2つに分けてお話したいと思います。
(ここからが、今回本当にお伝えしていきたい部分です!)
既存の借入返済を再開するとしても、元々の条件通りにすると、初年度から数千万円の元金を払うような形になってしまい、現実的ではありませんでした。そこで、全ての融資を10年~15年返済の融資に借換えさせてもらうことで、収益の範囲で返済できるように収めたのです。
しかし、これだけでは、資金繰りが不安定になる可能性があるばかりか、成長していくための資金もありません。そこで、日本政策金融公庫がもつ、最大15年返済不要の資本性劣後ローンという融資と、これとは別に
メインバンクから融資を合わせて1億円受けることにしたのです。
ちなみに、資本性劣後ローンとは、借入金ではあるものの資本金とみなして良いという特別な融資のことです。
具体的なメリットとして、5年、10年、15年の期限一括返済で、その間は金利のみの支払でOK、この融資を受けると銀行からの信用力がアップして融資が受けやすくなります。
もちろんデメリットもあって、通常の融資に比べて計画書のボリュームが多く、私たちのような専門家が計画を作る必要があったりもしますし、この融資を受けたのちの業績が良い場合は金利が高くなる(業績が悪いと低くなる)ということがあります。
ただ、総じていえば、この資本性劣後ローンは、業績が悪化した企業が復活を遂げるためには有効な融資です。このA社も、2年間銀行に1円の元金も返済していなかったわけですが、この融資が呼び水となり、
既存融資の借換え、そして他の新規融資を実現したといえます。
こうして、当社は無事に事業再生を果たしたということです。
新型コロナ版の資本性劣後ローンが出た!
8月になり、いよいよ新型コロナ版の資本性劣後ローンが、日本政策金融公庫と商工中金からでました。
この特徴を挙げると、
・既存の資本性ローンより金利が低い
・コロナ融資とはさらに別枠(公庫7200万円、商工中金7.2億円)
・最大20年返済不要
・資金使途自由
のようになっています。
もちろん、この融資は、借入ではあるものの、資本金と同等にみなして良い、というものです。
これを使えれば、コロナで膨らんだ借金を返せそうではありませんか?
まとめ
ということで、最後に、コラムをまとめておきたいと思います。今回は、コロナで膨らんだ借金をどうやって返済するのか、という出口のイメージを共有したかったのです。
これまでの事業再生シーンでも活躍していた資本性劣後ローンでしたが、コロナ版が出て、資金使途自由、最大20年返済不要になっていますから、これをうまく利用できれば、コロナで膨らんだ借金を減らしていくことができるのではないでしょうか。
もちろん、このローンもいずれは返済しなければいけません。しかし、これだけの時間を確保できるのだとすれば、復活の余地はあると思いませんか?
「借金が増えてしまってこれからどうしたらいいのか?」と不安に思っている方や、
「これ以上借金を増やしてどうする?」と廃業や倒産を考えている方、
そんな方々が、今はどんどん増えてしまっていると思います。
そんな方々にこそ、この事例や、この融資を知ってもらいたいと思います。
私は、“諦めなければ道は開ける”と信じています。(かなり本気でそう思っています)
まだまだ大変な状況は続いていると思いますが、諦めずにがんばって欲しいと思います。
応援しています。
(参考リンク)
資本性劣後ローンの詳細は、こちらからどうぞ。
日本政策金融公庫
https://www.jfc.go.jp/n/finance/saftynet/pdf/shihonseiretsugo.pdf
商工中金
https://www.shokochukin.co.jp/disaster/pdf/covid_04.pdf