3期連続赤字からたった4ヶ月で黒字化した建設業の社長の話

こんにちは。
資金繰り・事業再生の専門家、道家健一です。
今日は、実質的に、たった4ヶ月で会社を立て直し、黒字化させた社長のお話をしたいと思います。
先に結果をお話してしまうと、その社長は、私たちが関与させていただいたその期中に、売上昨対比1.6倍増、創業来過去最高益を達成。翌年には、関与前対比で売上2倍増。税引き前の利益で、なんと売上の10%まで出せるようになり、前期に出したばかりの創業来過去最高益をさらに3倍以上に伸ばされました。。
ちょっと異常なくらいですよね。
こんな大躍進を遂げられた社長ですが、ご相談にいらしたときは、3期連続赤字、債務超過で銀行融資も受けられず、資金繰りの為に無理な受注をしているという状態だったのです。
なぜそんな会社が、たった数ヶ月で大変貌を遂げられたのか、ここをお話できたらと思います。
ずさんな管理で負のスパイラル
事例としてご紹介する会社は、年商2.5億円の建設業です。まずは、ここに至るまでの経緯もお話できたらと思います。
当社は、個人事業主として創業するも、メインの得意先が倒産し、いきなり数千万円の負債を抱えてしまいます。個人事業でこれだけの負債になれば破産という選択肢を選ぶ方も多いのですが、この社長は違いました。むしろ会社を法人化させて、より利益が出る仕事に絞りこんで強みを磨いていったのです。
そうして、何とか資金もやりくりしながら経営を続け、安定的な売上や利益が出るようになり、やっとの思いで過去の負債を返済できるようになってきたところでした。
売上は上がるのに利益がでない
しかし、ここに運命の分かれ道が現れたのです。受注があまりにも好調であったため、仕事をキャパ以上に請け過ぎてしまいました。すると、やるべき管理業務が疎かになっていきます。具体的には、
1)きちんと見積もりをせずに感覚で受注する
2)受注金額を確定しないまま工事をスタートさせる
3)下請けからろくに見積もりもとらずに発注する
などなど。。
その結果、売上はどんどん上がるが、利益はなくなり、赤字へ転落しました。
そして資金繰りはさらに悪化の一途をたどる
そんな時に、さらに問題が発生します。この時までに、売上の8割を依存するようになっていった得意先の現場監督から、個人的なリベートを要求されるようになったのです。
「払わなければ仕事を止めるぞ!」
という明らかな脅しでした。
さらに、既に受注も決まり現場が動き始めていたにも関わらず、突如値引きを求められ、その現場では3,000万円にも及ぶ損失を被されたりもしました。
せっかく過去の負債を返せるようになってきたにもかかわらず、また振り出しどころか、さらに負債が膨れ上がり、今を乗り切るために無理な借入、無理な受注を行う、という完全に負のスパイラルに陥っていったのです。
こうしたお話を聞き、私から処方箋を出したその時・・・
社長がぽつりとつぶやきました。
「頑張れば何とかなると思っていたんですけどね。。」
そう言って押し黙ると、おもむろに天井を見上げ、頬に涙が滴りました。
これまでの怒りやくやしさ、第三者に相談できた安心感、押し殺していた感情があふれ出たのだと思います。静かな男泣きでした。
当社への処方箋
お話を伺い、その現場監督への怒りを沸々と募らせた私は、当社を何としても再生させると心に決めました。そして、打つべき手立てをひとつひとつお話していったのです。
まず大前提として、その悪質な監督との付き合いが続けば、会社は破綻するだろうとハッキリと伝えました。
損失を被される、お金を巻き上げられるということはもちろんとして、帳簿上処理できない『数字』(=裏金、リベートの類)が社長への貸付金となり、銀行からの融資を受けづらくさせていたからです。
つまり、赤字でお金が減る、社長への貸付金(=裏金、リベート)という形でお金が減る、融資は返済のみとなりお金が減る、という三重苦の状態なのです。そして、この悪循環の発生点こそ、悪質な監督でした。
一方で、本当にその監督がいないとした場合に、当社では仕事が受けられないのかをヒアリングしていくと、よくわかってきたのです。そうではないということが。
なぜなら、当社には非常に大きな強みがあり、これなしにはもはや元受けも仕事を受注できないほどの要素足りえると判断できたからです。
そのため、すぐに以下のアクションプランを立て実行に移していきました。
具体的な打ち手
1)分解:資金繰り表を作る、現場の収支実績を作る(お金の動きと赤字要因の特定)
2)増加:新規の資金調達
3)撤退&結集:悪質な監督との仕事を断り、強みが活きる仕事に集中し高収益化
もちろん、普通ならば、メイン得意先の仕事を断るのは勇気のいることでしょう。
しかし、いつかどこかでけりをつけねば倒産させられてしまいます。
社長は腹を決めたのです。
メイン得意先の役員と話をして、結果的にその監督の仕事から外れることに成功したばかりか、狙った仕事、当社が強みを活かせる仕事の継続をも勝ち取りました。
また、問題となっていた財務内容についても、弊社側で紐解き、銀行への説明をすることによって資金調達にも成功。
こうして、たった4カ月程度で資金繰りの先行きや黒字化の目処をつけたのです。
そこからは、まさに快進撃でした。得意なことをやっているのですから、うまくできて喜ばれる、だから仕事が増える。儲けを出すために必要な要素は取り入れてあるので儲かる。銀行との付き合い方も見直してあるので、関係性も良くなり、融資はいつでも引き出せる。
これが、冒頭に示した異常と思えるくらいの数字の裏側にあることです。
1つの気付き、1つの戦略が圧倒的な成果を生み出していったとも言えるでしょうか。
まとめ
3期連続赤字だった当社が、たった4ヶ月で資金繰りと黒字化に目途を付けた理由は、現在の苦境を招いている要因の理解と、得意分野への集中化でした。
とはいえ、いざ実行しようとなるとできない方が大半です。しかし、当社には、私の目の前で涙を流した社長がいて、そこには覚悟がありました。さらには、私たちのサポートが加わることによって、適切な数字の理解が進み、銀行との付き合いも円滑となっていきました。
これらの要素が組み合わさることで、私たちの関与前対比で売上2倍、税引前利益率10%(対売上比)、創業来過去最高益という圧倒的な成果を生み出すことができたのです。
もし、同じような状況に悩んでいるのだとしたら、まずは家族や税理士などの身内以外の第三者に相談してみることをお勧めします。もちろん誰にでも話せる話ではないのですが、少なくとも今のままの意識レベルでは、目の前の問題は解決しないのではないでしょうか?
会社を変えていくためにも、自分を変えていくためにも、まずは新たな視点を取り入れてみてください。
応援しています。負けるな社長!