公開日:2026年4月2日 / 更新日:2026.04.03

賃上げ促進税制|中小企業向けに2024年改正のポイントと控除率・計算方法を解説

賃上げ促進税制|中小企業向けに2024年改正のポイントと控除率・計算方法を解説

賃上げ促進税制は、給与等支給額を前年より増やした企業が、増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から差し引ける制度です。
令和6年度税制改正により、2024年4月以降開始の事業年度から要件や上乗せが整理され、教育訓練費の増加や認定取得など所定の条件を満たす必要があります。

本記事では、仕組みの全体像から控除率の決まり方、計算の落とし穴、申告時に残すべき証憑まで、実務目線で分かりやすく解説します。
まずは自社が対象になるかを確認し、決算前に試算しておきましょう。

賃上げ促進税制の基本と2024年改正概要

賃上げ促進税制は、前年より従業員の給与等を増やした企業が、増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から差し引ける制度です。
令和6年度税制改正で要件や上乗せが見直され、2024年4月以降開始の事業年度から使いやすさが強化されました。

まずは仕組みや改正点、他制度との違いを以下で確認していきましょう。

賃上げ促進税制の基本的な仕組み

賃上げ促進税制は、国内の従業員に支払う「給与等支給額」が前年度より増えた場合、その増加額に一定の控除率を掛けた税額を法人税から差し引ける仕組みです。
中小企業者等では、給与等の増加率が1.5%以上になることが基本要件となり、控除率は15%が基準です。

増加額の算定では、助成金などの影響を調整するケースもあるため、賃金台帳や支給明細を根拠として集計する必要があります。
また、控除できる金額には法人税額の20%までの上限があるので、見込み税額とあわせて試算しておくと判断がぶれにくくなります。

2024年の改正で変わったポイント

2024年改正では、賃上げの水準に応じた上乗せが整理され、取り組みが強いほど控除率が伸びる設計になりました。
中小企業者等の場合、基本の増加率1.5%に加え、2.5%以上の賃上げで控除率が上乗せされます。

さらに、教育訓練費を前年度比5%以上増やし、かつ給与等支給額の0.05%以上を投じると追加の上乗せ対象です。
くるみん・えるぼし(プラチナ含む)などの認定取得も評価され、条件を満たせば控除率は最大45%まで高くなります。

ただし、適用年度の判定や証憑の残し方でつまずきやすいので、決算前に試算して整えておくと安心でしょう。

所得拡大促進税制との違い

所得拡大促進税制は、かつて賃金総額の増加を後押しするために設けられた税制優遇で、現在は賃上げ促進税制へ整理・移行した位置づけです。
名前が似ていますが、現行の賃上げ促進税制は、給与等支給額の増加率を基準に控除率を決め、教育訓練費や両立支援・女性活躍の取り組みで上乗せできる点が特徴になります。

つまり「賃上げ+人材投資+環境整備」をセットで評価する設計なので、単に給与を上げただけでなく、何に投資したかまで説明できる状態にしておくと実務がスムーズです。
なお、適用可否は会社規模や要件で変わります。

賃上げ促進税制の適用条件と控除率

賃上げ促進税制は、従業員への「給与等支給額」を前年より増やした企業が、増加額の一部を税額控除できる制度です。
適用可否は、給与の増加率などの基本要件を満たすかで決まり、要件を満たすほど控除率が上乗せされます。
加えて、教育訓練費の増加や両立支援・女性活躍に関する取り組みが評価される点も特徴です。

ここでは、基本要件と上乗せ要件を順に紹介します。

基本要件:給与増加で15%控除

基本は、国内の従業員に支払う給与等支給額が前年度を上回り、制度が定める増加率を満たすことが出発点です。
条件をクリアすると、増加額に一定の控除率を掛けた金額を法人税(個人事業主は所得税)から差し引けます。
特に中小企業者等では、増加率1.5%以上で控除率15%が基準となり、賃上げの効果を税負担の軽減で受け止められます。

ただし、控除できる金額には法人税額の上限(一定割合)があるため、決算前に見込み税額とあわせて試算し、適用の可否と効果を整理しておくと判断しやすいでしょう。

上乗せ要件:教育訓練費と女性活躍支援

基本要件を満たしたうえで、追加の取り組みを行うと控除率を上乗せできます。
教育訓練費は「前年度より増やしたか」に加え、一定の増加率や給与等支給額に対する割合など、複数の判定がセットになるため、研修費・外部講座費・OJT関連費用などを科目別に整理して根拠を残すことが大切です。

また、女性活躍・両立支援については、えるぼし・くるみん等の認定取得が評価対象となり、条件を満たす場合に上乗せが適用されます。
何を実施し、どの認定・要件に該当するかを先に確認しておくと、賃上げと人材投資を一体で進めやすくなります。

税額控除の計算方法と実例

税額控除の金額は、「前年より増えた給与等支給額」と「控除率」を掛け合わせて考えます。
さらに、教育訓練費や認定制度などの要件を満たすと控除率が上乗せされるため、先に前提を整理しておくと試算がぶれにくいです。

ここでは、給与等支給額の集計、控除額の算定例、赤字などで控除しきれない場合の扱いを順に紹介します。

給与支給額の計算方法

まず押さえたいのは、制度上の「給与等支給額」は、社内で使う人件費の合計と必ずしも一致しない点です。
一般に、基本給だけでなく賞与や各種手当も含めて集計しますが、対象となる支給項目や従業員の範囲は制度の定義に沿って確認する必要があります。

たとえば、役員報酬や臨時的な支給の扱いはケースで差が出やすいので、賃金台帳と総勘定元帳を突合して根拠を残すと安心です。
加えて、前年分も同じ基準で集計し直せば、増加額の計算が安定します。

控除額の具体的な計算例

控除額は、「給与等支給額の増加額 × 控除率」で算定します。
仮に前年の給与等支給額が1億円、当年が1億200万円なら増加額は200万円です。
控除率を15%と仮定すると、控除額は200万円×15%で30万円になります。

ここに上乗せ要件(教育訓練費の増加や認定取得など)が加わると控除率が変わり、試算結果も動くはずです。
なお、控除できる金額には法人税額の一定割合までという上限があるため、税額の見込みも合わせて確認すると実務がスムーズになります。

赤字企業でも活用できる繰越控除

当期が赤字などで法人税が発生せず、計算上の控除額を使い切れない場合でも、要件を満たせば翌期以降に繰り越して控除できる仕組みがあります。
つまり、賃上げの実施時点で税負担がゼロでも、将来の黒字化局面でメリットを受け取れる可能性が残ります。

ただし、繰越の可否や期間、適用のための手続きは制度要件に左右されるため、申告書での記載や添付資料の準備が欠かせません。
とくに、増加額の算定根拠や教育訓練費の集計根拠を残しておくと、後年の確認にも耐えやすいです。
あわせて、先に「当期で使える分」と「繰り越す分」を分けて試算しておくと、資金計画にも反映しやすくなります。

賃上げ促進税制の申請手続きと必要書類

賃上げ促進税制は、原則として「申請書を出して認定を受ける」制度ではなく、決算・申告の中で要件を満たすことを示し、税額控除を適用するタイプです。
したがって、必要なのは提出書類そのものよりも、計算根拠を説明できる証憑と集計表をそろえることです。
給与等支給額や教育訓練費の集計方法を決め、証拠書類を整えておけば、申告時の作業が軽くなります。

ここでは、申告までの流れと、準備しておきたい書類を順に解説します。

申請に必要な書類と手続きの流れ

実務は「要件の確認→金額の計算→申告書への反映→根拠資料の保管」という順番で進めます。
まず、当期と前期で給与等支給額を同じ基準で集計し、増加額と控除額の算定が必要です。

次に、上乗せ要件(教育訓練費の増加や認定取得など)の該当有無を確認し、控除率に反映させます。
申告では、法人税申告書の別表や明細書等で控除額を計上し、算定の根拠となる資料は社内で保管する運用が基本です。

準備物としては、賃金台帳・給与明細の集計、総勘定元帳の人件費関連科目、賞与台帳、従業員区分が分かる名簿、上乗せ要件の判定に使う集計表などをそろえると、説明が一貫します。

教育訓練費の記録と注意点

教育訓練費の上乗せを狙うなら、「何に、いくら、誰のために使ったか」が追える形にしておくと迷いません。
具体的には、研修・セミナー・eラーニング等の受講料、教材費、外部講師への謝金などを支出ごとに一覧化し、領収書や請求書と紐づけます。

あわせて、実施日・対象者・内容が分かる資料(受講記録、参加者名簿、カリキュラム、社内稟議)を残しておくと、集計の再現性が高まります。

注意点は、福利厚生や採用目的の費用など、教育訓練費に当たるか判断が分かれやすい支出を混在させないことです。
科目・プロジェクトで区分し、前期と当期で同じ基準で集計すれば、増加判定の根拠も揺れにくくなります。

賃上げ促進税制のメリットと注意点

賃上げ促進税制は、前年より給与等支給額を増やした企業が税額控除を受けられる仕組みです。
賃上げのコストを税負担の軽減で一部補えるため、人材確保や定着にも結び付きます。

一方で、要件を満たさないと控除は使えず、控除額にも上限があります。
さらに、集計基準や証憑があいまいだと後で説明が難しくなりがちです。

ここでは、企業側・従業員側の利点と、適用時に押さえたい注意点を順に解説します。

企業にとってのメリット

企業側の利点は、賃上げの負担を税額控除で一部回収でき、手元資金の圧迫を抑えられることです。
さらに、賃上げや働きやすさへの取り組みは、採用・定着の面でプラスに働く傾向にあります。

また、教育訓練費の増加や認定取得などを組み合わせれば、控除率の上乗せを狙える場合があります。
賃金だけでなく人材投資の姿勢を示せるため、取引先や金融機関への説明材料にもなり、長期の成長戦略と整合させやすい制度といえるでしょう。

従業員にとってのメリット

従業員にとって分かりやすい利点は、賃上げが実施されやすくなる点です。
制度の活用には給与等支給額の増加が前提となるため、企業が賃金水準を見直す動機になります。

さらに、教育訓練費の要件を意識すると研修や学習機会が増え、業務の幅を広げやすくなります。
両立支援や女性活躍の取り組みが進めば、働き方の選択肢が増え、安心してキャリアを積みやすい環境づくりにもつながるでしょう。

適用時の注意点とリスク

注意点は大きく三つあります。
第一に、要件は「給与を上げた」だけでは足りない場合があり、増加率や対象範囲の判定を取り違えると、想定した控除が使えません。

第二に、控除額には法人税額の一定割合までという上限があるため、試算せずに賃上げ計画だけ先行すると効果が読み違えやすいです。

第三に、集計と証憑の整備が後追いだと、上乗せ要件の判定や説明が難しくなります。
賃金台帳・賞与台帳・勘定科目内訳、教育訓練費の一覧と領収書、認定関連の資料を同じ基準で保管しておけば、申告時の作業も落ち着いて進められるでしょう。

賃上げ促進税制の適用対象は?

原則として、青色申告を行う法人で、当期の給与等支給額が前期を上回り、所定の増加率などの要件を満たす企業が対象です。

中小企業者等と大企業では判定基準や控除率の設計が異なるため、まず自社がどちらに当たるかを確認します。
次に、給与等支給額の集計範囲(対象となる従業員、含める支給項目)を制度の定義に合わせ、前期と当期を同じ基準で比較できる状態にします。

要件を満たせば業種を問わず活用余地がありますが、上乗せ要件は別判定となるので、基本要件と分けて整理すると分かりやすいです。

控除率の詳細と適用条件

控除額は「給与等支給額の増加額 × 控除率」で算定し、控除率は賃上げの水準や上乗せ要件の達成状況で変わります。
中小企業者等では、増加率が一定以上なら基準の控除率が適用され、さらに賃上げ幅が大きい場合や教育訓練費の増加、認定取得などで上乗せされる仕組みです。

注意したいのは、控除できる金額に法人税額の一定割合までという上限があることと、増加額の算定は集計基準の統一が前提になる点です。
実務では、賃金台帳と総勘定元帳で金額を突合し、上乗せ要件の判定表も合わせて作っておくと、申告時に迷いにくくなります。

教育訓練費の増加が求められる理由

教育訓練費が上乗せ要件に含まれるのは、賃上げとあわせて人材育成を進める企業を後押しする狙いがあるためです。
賃上げだけでは短期の負担が先に立ちますが、研修や学習への投資を組み合わせれば、生産性の向上や業務の高度化につながり、賃上げを継続しやすい土台が整います。

制度上は、前期より教育訓練費を増やしたことを数値で示す必要があるため、対象となる支出を一覧化し、領収書・請求書・受講記録と紐づけて保管しておくと安心です。
また、費用の区分を初めに決めておけば、増加判定の根拠もぶれにくくなります。

まとめ:賃上げ促進税制の改正ポイントを理解しよう

賃上げ促進税制は、賃上げの負担を税額控除で一部補える制度ですが、増加率の判定や集計範囲を誤ると想定した控除が使えない可能性があります。
2024年改正では賃上げ幅に応じた上乗せが整理され、教育訓練費の増加や、くるみん・えるぼし等の認定が控除率に影響します。

給与等支給額は前期と同じ基準で集計し、賃金台帳や請求書などの根拠資料をそろえたうえで、税額上限も踏まえて決算前に試算しておくと安心です。
また、当期が赤字で控除しきれない場合でも、要件を満たせば繰り越して黒字期に活用できます。

賃上げは人材確保や企業成長につながる重要な取り組みですが、人件費の増加は資金繰りや利益計画にも影響するため、制度の活用とあわせて経営全体のバランスを考えることが大切です。

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【コラム著者】

代表取締役 道家 健一

株式会社リンクソートコンサルティング
代表取締役 道家 健一

中小企業の資金繰り・事業再生支援は1,000社以上。
「ホンマでっか!?TV」番組出演、「お金を回収する交渉技術」著書、セミナー・講演の実施など、多数の実績あり。

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