クラウドファンディングで資金調達する方法や特徴、活用事例まで徹底解説

インターネットを通して不特定多数の人から支援金を集められる「クラウドファンディング」は、企業の資金調達手段のひとつです。実際にクラウドファンディングの活用を検討している経営者も多いのではないでしょうか。
この記事では、クラウドファンディングの概要や企業における活用事例やメリットなどを解説します。
1 クラウドファンディングとは?

クラウドファンディングとは、インターネットを通して多く個人投資家から支援を受け、事業に必要な資金を調達する方法のことです。「群衆(クラウド)」「資金調達(ファンディング)」を組み合わせて「クラウドファンディング」と呼びます。
仕組みを簡潔に説明すると、クラウドファンディングサイトに自社専用のプロジェクトページを作成・掲載し、そのプロジェクトに賛同した人たちから支援を受けられます。掲載されているプロジェクトのジャンルは、起業や開業、事業存続、まちづくり、プロダクト開発などさまざまです。
2 クラウドファンディングの種類

クラウドファンディングといってもさまざまな種類があります。具体的には以下の3つです。
- 購入型クラウドファンディング
- 寄付型クラウドファンディング
- 投資型クラウドファンディング
2-1 購入型クラウドファンディング
購入型クラウドファンディングとは、自社のプロジェクトに賛同して資金を提供してくれた人たちに対して、後日商品やサービスなどのリターンを提供する方法のことです。
購入型クラウドファンディングには、「ALL-in方式」「ALL or Nothing方式」の2種類があり、資金の受け取り方法がそれぞれ異なります。
ALL-in方式は、プロジェクトの目標金額に達していない場合でも、集まった分の支援金を受け取れる仕組みです。一方、ALL or Nothing方式は目標金額を達成した場合のみ支援金を受け取ることができます。
どちらの方式を選ぶかはプロジェクトの内容によって異なるでしょう。例えば、目標金額を達成しない場合でも必ずプロジェクトを実施したいならALL-in方式を選ぶのが適切だといえます。
2-2 寄付型
寄付型クラウドファンディングとは、プロジェクトに対して支援者からの寄付を受けるという形で資金を集める方法のことです。
あくまで寄付であるため購入型クラウドファンディングとは異なり、リターンは基本的には発生しません。
しかし、起案者からの手紙やメール、写真などを通してプロジェクトにおけるその後の活動報告を実施するケースもあります。このケースでは、支援してくれたことへの感謝の気持ちを表す意味で行われます。
2-3 投資型
投資型クラウドファンディングとは、個人投資家から出資や貸付を行なってもらう方法のことで、投資家は分配金や売却益などの金銭的なリターンを得られます。今後伸びしろや成長が期待される未上場のベンチャー企業やスタートアップ企業などが投資対象として挙げられます。
投資型クラウドファンディングは、「ファンド型」「融資型」「株式型」の3つの種類にわけられます。
- ファンド型・・・特定の事業に対して個人投資家から資金を募る方法。投資家は出資額に応じた分配金を受け取る。
- 融資型・・・個人投資家から資金の貸付を行なってもらう方法。投資家はリターンとして利息を受け取る。
- 株式型・・・個人投資家へ非公開株を提供して資金を募る方法。投資家は企業の業績に応じて配当金を受け取る。
3 資金調達におけるクラウドファンディングの活用事例

クラウドファンディングにはさまざまな種類があることがわかりましたが、実際に企業ではどのようなケースで活用できるのか気になる方も多いでしょう。
ここではクラウドファンディングの活用例を紹介します。
- 事業存続・事業拡大
- 新製品・サービスの開発・販売促進
- 地域活性化・社会貢献プロジェクト
3-1 事業存続・事業拡大
クラウドファンディングは、事業存続や事業拡大を実現するためのツールとして活用することができます。景気の状況などによって事業の継続が厳しくなるケースも多く、資金ショートを防ぐためには可能な限り早く運転資金を確保しなければなりません。
クラウドファンディングは準備に少し時間がかかるものの、魅力的なプロジェクトページを作成して支援者からの共感を得られれば、短期間(数日や1週間以内)で目標金額を達成できる可能性があります。また、運転資金の確保だけでなく、新規顧客の獲得や顧客流出防止にも活用できるツールでもあるため、結果次第では「経営危機からの脱出→事業の安定化→収益力の向上」といったビジネスの上昇気流に乗れる可能性もあります。
実際に事業存続や事業拡大のためにクラウドファンディングを活用する際には、「なぜその事業や活動が社会にとってなくてはならないのか?」というその事業が持つ価値や必要性を明確にしてメッセージとして届けることが重要なポイントになります。
3-2 新製品・サービスの開発・販売促進
企業として新製品開発におけるアイデアがあっても、それをきちんと形にし、必要とする顧客に届けるには資金を集めなければなりません。また、実際に販売しても需要がなく、認知もされていなければ損失につながってしまいます。
クラウドファンディングなら資金調達の側面以外にも、新製品やサービスを開発する際の市場調査やプロモーションなどにも活用することができます。例えば、テストマーケティングの場として販売前のユーザーの意見に直接触れることで改善点や受容性を把握できるため、開発や販売におけるリスクを軽減しながらプロジェクトを進められます。
また、性別を問わず幅広い年齢層の人たちが利用するクラウドファンディングサイトでプロジェクトページを掲載すれば、広告費を負担することなく自社の商品やサービスの認知拡大を図れるでしょう。
3-3 地域活性化・社会貢献プロジェクト
地域活性化や社会貢献プロジェクトの一環としてクラウドファンディングを活用することも可能です。地域活性化とは、それぞれの地域の文化や経済などを活性化させるための取り組みです。
例えば、その地域特有のイベント開催や商品開発、空き家を活用したリノベーション、映画制作などさまざまな目的でクラウドファンディングが活用されています。地域の事業者同士が協力し、クラウドファンデングを通して地域課題を解決するためのプロジェクトを実現するケースも見られます。
クラウドファンディングなら資金調達が行えるだけでなく、地域での活動や魅力を社会に発信して認知を拡大することが可能です。
4 クラウドファンディングで資金調達するメリット

ここでは、企業がクラウドファンディングで資金調達するメリットについて解説します。
- 実績がなくても資金調達ができる
- 多額の資金を調達できる可能性がある
- 資金はリターンを納品する前に入金される
4-1 実績がなくても資金調達ができる
銀行などの金融機関から融資を受ける場合は、返済能力や信用力、事業の持続可能性などを客観的に証明しなければならず、そのためには過去の実績が必要になります。銀行がこれらの要素を通して厳しく審査するのは安全性が高い企業と取引し、貸し倒れリスクを回避するためです。
クラウドファンディングなら、自社の「アイデア」や「実現したいこと」などを基準として評価してもらいやすいため、実績や利用歴がなくても資金調達することができます。また、融資審査のように書類の作成や準備が不要であるため、資金調達へのハードルが低いといえます。
4-2 多額の資金を調達できる可能性がある
クラウドファンディングは、支援者1人あたりが提供する資金は少額になり、一般的には1万円前後だといわれています。参考までにクラウドファンディングサイト「READYFOR」の平均支援単価は15,356円とされています。
支援者1人あたりが提供する資金は少額ですが、多くの支援者を集めることで多額の資金を調達できる可能性があります。プロジェクトページには「支援者数」が表示されるため、例えばここが100人集まれば、上記の平均支援単価を利用すると単純計算で100万円以上の資金調達が可能になります。
さらにクラウドファンディングは大きく成功すれば千万円、億円単位の資金を調達できる夢のあるツールです。例えば、Readyforで募集された国立科学博物館のプロジェクトでは約9.1億円の国内最高額の資金調達に成功しています。
4-3 資金はリターンを納品する前に入金される
クラウドファンディングで得られた支援金は、リターン(返礼品)を納品する前に入金されるため、先に必要な資金を確保した上で余裕を持って対応することができます。
支援金が振り込まれるのはクラウドファンディングによっても異なりますが、プロジェクト終了月の翌月末日か翌々月の中旬あたりです。
なお、「早期振込サービス」「早期入金オプション」という形で支援金の振り込み時期を早めることができるサービスを展開しているサイトもあります。
5 クラウドファンディングで資金調達するデメリット

クラウドファンディングで資金調達する際にはデメリットも把握しておきましょう。
- 目標金額を達成できない場合がある
- 資金調達まで時間がかかる
- 手数料が発生する
5-1 目標金額を達成できない場合がある
クラウドファンディングでは上記でも触れたような多額の資金調達できる可能性がある夢のあるツールです。しかし、支援者数次第では目標とする金額を達成できないケースということも念頭に置いておく必要があります。
また、ALL or Nothing方式を採用した場合は目標金額に達しないと支援金を1円でも受け取ることができません。つまり、インターネットにプロジェクトは公開するものの、事業計画自体は失敗に終わってしまう可能性があります。
5-2 資金調達まで時間がかかる場合がある
クラウドファンディングを活用する場合は、資金調達まで時間がかかる場合があります。クラウドファンディングサイトにプロジェクトを公開するためには、事業プランの立案や専用ページの作成、審査などさまざまな準備が必要です。
また、プロジェクト公開後においては支援者がすぐに集まるとは限らないため、準備から公開、支援金の入金まで3ヶ月程度はかかると想定しておいてほうが良いでしょう。
なお、先ほども解説したように数日から1週間ほどで目標金額を達成できる可能性もあります。しかし、実際にどれくらいの期間で資金を調達できるか、そして成功できるかどうかは公開してみないと正確にはわからないため、「いつまでに資金が必要」と明確に期日が決まっている場合は他の資金調達手段を検討するのが良いでしょう。
5-3 手数料が発生する
多くのクラウドファンディングサイトでは、手数料がかかります。
クラウドファンディングサイトの手数料は、「サービス利用料」と「決済手数料」を合わせたもので、集まった支援金を受け取ると同時に差し引かれます。手数料の相場は10%〜20%程度ですが、具体的な金額は各サイトによって異なるため事前に確認しておくことが大切です。
また、All-in方式を採用した場合は目標金額を達成しなかった場合でも、手数料が発生します。つまり、赤字にならないよう手数料やリターンを考慮しながらプロジェクトの計画を立てることが求められます。
6 クラウドファンディングの全体の流れ・手順

クラウドファンディングをスムーズに活用するために以下の全体の流れや手順を押さえておきましょう。
- プロジェクトの計画・目標設定
- クラウドファンディングサイトの選定
- 審査・プロジェクトページの作成
- プロジェクトの開始・運用
- リターンの実施・活動報告
まずは、プロジェクトの計画や目標設定を行います。具体的には「何を実現したいのか?」「なぜそれを行うのか?」「そのためにはどのくらいの資金が必要なのか?」などを具体的に決めていきます。次に自社の目標や計画をもとに、クラウドファンディングサイトを選定し、審査を申し込みます。審査にあたっては、サイト独自の審査基準が設けられているため事前に確認しておくとスムーズです。
無事審査が終わりプロジェクトページが完成すれば、いよいよ公開・運用です。無事に支援金が集まれば、実際にプロジェクトを開始し、後日支援者にリターンを送付するという流れになります。
7 クラウドファンディングによる資金調達を成功させるためのポイント

クラウドファンディングを成功させるためには、自社のプロジェクトにいかに共感してもらえるか、魅力を感じてもらえるかが非常に重要な要素となってきます。
多くの支援者を募るためには魅力的なプロジェクトを考え、そしてわかりやすい形で届けるためにプロジェクトページも入念に作り込むことが求められます。また、リターンは支援者を惹きつける重要なポイントであるため、コストを考慮しながらもニーズにマッチした質の高いものを提供することが大切です。
その他にもクラウドファンディングサイトによって特徴が異なるため、自社のプロジェクトの性質に合ったプラットフォームを選定しましょう。
8 クラウドファンディング以外の主な資金調達方法

企業がスムーズに資金調達を成功させるためには、他の手段も把握しておく必要があります。
- 銀行融資・ビジネスローン
- 制度融資
- 補助金・助成金
- 資産の売却・リースバック
8-1 銀行融資・ビジネスローン
銀行融資は、銀行が企業に対して資金を貸し出す制度のことです。業務実績や信用力があるとみなされれば、大口の融資を受けられる可能性があります。また、銀行が提供するビジネスローンもあり、活用すれば迅速な資金調達を実現できます。
その他、政府系金融機関の日本政策金融公庫も融資制度を用意しており、「経営環境変化対応資金」「金融環境変化対応資金」などのセーフティネット貸付を行なっています。
8-2 制度融資
制度融資とは、地方自治体と金融機関、信用保証協会が連携して融資を行う制度のことです。制度融資に申し込みすると、保証協会や自治体が金融機関との間に入って補助を行うため、中小企業や小規模事業者は融資を受けやすくなるというメリットがあります。
具体的には、保証協会が信用保証を行い、自治体が貸付原資の一部を負担しているため金利が低く、かつ長期間の借入が可能です。また、自治体によっては企業の信用保証料を補助してくれるため確認しておくと良いでしょう。
8-3 補助金・助成金
補助金や助成金は、国や地方自治体から支援される資金のことで、事業再生などを目的としてさまざまな制度が用意されています。基本的に返済の義務はありませんが、書類の準備や審査に時間と手間がかかります。なお、補助金は競争率も高いため、必ず支援を受けられるとは限りません。
また補助金や助成金は、原則後払いとなっているため、事前に自己資金を確保しておくことが大切です。
「資金調達 補助金」
8-4 資産の売却・リースバック
企業が所有する不要な固定資産を売却して現金化する方法のことです。買い手が見つかればスピーディーにまとまった資金を確保できます。
また、リースバックもおすすめの手段の1つです。リースバックとは、自宅や設備などの固定資産を売却して資金を得ると同時にリース契約を行い、その資産を賃借して利用を続ける方法のことです。例えば、社長の個人宅を売却してリース契約を行うという方法もよくあるパターンです。ただ毎月リース料が発生するため、信頼できる売却先を探すことや収益力の維持は欠かせない要素です。
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まとめ クラウドファンディングでの資金調達を成功させよう
クラウドファンディングによる資金調達は、事業存続や事業拡大などさまざまな目的で活用することができます。多くの支援者が集まれば多額の資金を調達できるだけでなく、新規顧客の獲得にもつながるなどさまざまなメリットがあります。しかし、資金調達においては自社の課題や状況に合わせた最適な手段を採用することが大切です。
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