公開日:2026年7月22日 / 更新日:2026.07.22
資金繰り

企業の固定費削減方法とは?成功させるコツと注意点を解説

企業の固定費削減方法とは?成功させるコツと注意点を解説

企業の固定費削減は、利益率の改善や資金繰りの安定、ひいては企業の存続・再生につながる極めて重要な取り組みです。
しかし、家賃や人件費、通信費などをやみくもに削ると、現場の負担が増えたり、事業成長に必要な投資まで減らしたりするおそれがあります。特に経営が逼迫している局面では、誤ったコストカットが命取りになることも少なくありません。

この記事では、数多くの企業再生を手掛けてきたコンサルティングの視点から、企業が見直したい固定費の項目や、リスクを抑えた削減の進め方、注意点をわかりやすく紹介します。

企業が固定費削減で押さえるべき基本

企業の固定費削減では、まず費用の性質を分けて理解することが大切です。
また、固定費が利益や資金繰りにどう影響するのかを知ると、見直す優先順位も見えてきます。

この章では、固定費と変動費の違い、損益分岐点との関係を確認していきましょう。

固定費と変動費の違い

固定費とは、売上の増減にかかわらず毎月ほぼ一定で発生する費用のことです。例えば、オフィス賃料、正社員の人件費、リース料、保険料などが当てはまります。

一方で、変動費は売上や生産量に合わせて増減する費用で、仕入れ費や材料費、配送費などが代表例です。

この2つを明確に分類することは、会社にどの費用が重くのしかかっているのかを見極める手掛かりになります。売上が下がっても残る費用を把握しておけば、資金繰りの不安にも早めに対応できるでしょう。会計ソフトや試算表を活用し、まずは自社の費目を正しく分類することが、見直しの第一歩となります。

固定費削減と損益分岐点の関係

損益分岐点とは、売上と費用が同じになり、利益も赤字も出ない売上ラインのことです。固定費が高い企業では、黒字化するためにそれだけ多くの売上が必要になります。
ここで固定費を下げることができれば、同じ売上であっても利益が残りやすくなります。さらに、売上が一時的に落ち込んだ場合でも赤字幅を最小限に抑えられるため、固定費の大きい企業ほど、損益分岐点を下げるメリットを実感しやすいでしょう。

事業再生や資金調達の局面においては、固定費を自社でコントロールできている姿勢を示すことが、金融機関からの信頼獲得や良好な交渉にも直結します。

企業が固定費を削減するメリット

企業が固定費を削減すると、利益率や資金繰りに良い影響が出ます。
しかし、単に支出を下げるだけでなく、会社の経営を安定させる視点も欠かせません。

ここでは、固定費削減によって得られる主なメリットを整理していきましょう。

売上が同じでも利益率が高まる

固定費を削減すると、売上が大きく変わらなくても営業利益がダイレクトに改善します。例えば、毎月の家賃や通信費などを見直して支出を下げれば、残った利益を新しい設備投資や採用費へ回す余地が生まれます。

売上を増やす施策には時間や広告費がかかりますが、固定費の見直しは社内だけで完結するため、短期で取り組みやすい利益改善策といえます。さらに、削減効果は毎月積み上がっていくため、年間で見ると非常に大きな差となって現れます。

キャッシュフローを安定させやすい

固定費は売上が少ない月でも容赦なく発生するため、金額が大きいほど資金繰りの負担になります。
特に、入金までのサイト(期間)が長い企業では、毎月の支払いが重なることで手元資金が不足しやすくなるでしょう。

固定費を低く抑えておけば、急な売上減少や取引先からの入金遅れといった不測の事態にも、慌てずに対応できるようになります。資金繰りに余裕ができることで、仕入れや急な修繕、追加発注など、必要な支払いにも落ち着いてキャッシュを回せるのが大きなメリットです。

削減効果が継続しやすい

固定費削減の大きな強みは、一度見直すと効果が続きやすい点です。
例えば、不要なサブスク契約を解約したり、通信プランを変更したりすると、翌月以降も支出の低い状態が続きます。
ペーパーレス化や業務の外注化を進めると、費用だけでなく作業時間の削減にもつながるでしょう。

一方で、毎月発生する費用ほど放置すると負担が積み上がります。
特に、契約が自動更新される費用は見逃されやすいため、定期的に確認しておくことが大切です。
また、見直した内容を社内で管理すれば、同じ無駄が発生することも防げます。

固定費削減を進める手順

固定費削減は、思いついた費用から急に削るよりも、順番を決めて進めるほうが安心です。
以下では、固定費削減を進める基本的な手順を見ていきましょう。

毎月発生する固定費を洗い出す

固定費削減では、最初に毎月発生している支出を一覧にすることが大切です。
例えば、賃料、人件費、通信費、リース料、保険料、システム利用料などを科目ごとに並べると、費用の全体像が見えてきます。

また、請求書やクレジットカード明細を確認すると、使っていないサービスや重複した契約に気付けることもあります。
さらに、部署ごとに支出を分けると、どこから見直すべきかを考えやすくなります。

まずは直近3か月分の明細を集め、毎月続いている支払いを整理してみてください。

削減目標と優先順位を決める

固定費を洗い出した後は、いくら削減したいのか、どの費用から手を付けるのかを決めます。
まずは、金額が大きく、事業への影響が小さい費用から確認すると進めやすいでしょう。

また、契約期間や解約条件がある費用は、見直しに時間がかかることもあります。
そのため、短期で削減できるものと中長期で交渉するものを分けておくと、固定費削減の計画をスムーズに進められます。

担当者と期限を決めておけば、確認漏れや先送りも防げ、
削減額だけでなく、業務への影響も合わせて見ると、無理なく優先順位を決められるでしょう。

ただし注意すべき点として、社内だけで進めようとすると、過去の経緯や部門間のしがらみが邪魔をして、真に見直すべき聖域(人件費や家賃など)に手を付けられないケースも多いため注意が必要です。

企業が見直したい固定費の項目

企業の固定費には、人件費や賃料のように金額が大きいものから、通信費や保険料のように見落としやすいものまであります。
この章では、企業が見直したい主な固定費を項目別に確認していきましょう。

人件費と外注費を最適化する

人件費は企業の固定費の中でも大きな割合を占めやすい費用です。
ただし、安易に人員を減らすと、業務品質や従業員の意欲に影響する場合があります。
そこで、まずは残業時間、業務の重複、会議の多さを確認し、社内で行う仕事と外注する仕事を分けて考える必要があります。

また、専門性が高い業務だけを外部へ任せると、社員は本来の仕事に集中しやすくなるでしょう。
特に、経理、労務、採用、制作などは外注しやすい業務もあるため、費用対効果を確認してみてください。

なお、繁忙期だけ外注を使うなど工夫をすれば、固定的な人件費を抑えられるでしょう。

オフィス賃料と設備費を見直す

オフィス賃料は毎月必ず発生するため、固定費削減の効果が大きい項目です。
例えば、テレワークの定着で席が余っている企業では、面積の縮小や契約条件の見直しを検討できます。
また、複合機や什器、空調設備などのリース料も確認が必要です。

一方で、移転には初期費用や従業員の通勤負担も関わるため、賃料だけで比べず、運営にかかる総コストを見て判断することが大切になります。
もし、移転が難しい場合は、共用スペースの活用や契約更新時の交渉から始める方法もあります。

また、設備の利用頻度を調べると、不要なリース契約に気付くことができるでしょう。

水道光熱費と通信費を見直す

水道光熱費と通信費は、毎月の金額が小さく見えても年間では大きな固定費になります。
例えば、電力会社やガス会社、インターネット回線、法人携帯の契約内容を確認すると、現在の利用状況に合っていないプランが見つかることがあります。

また、照明のLED化や空調設定の見直しは、すぐに試しやすい方法の一つです。
さらに、使っていない回線や端末を整理すると、無駄な支払いを防げます。

特に、部署ごとに契約した通信サービスは管理から漏れやすいため、まとめて確認すると安心です。

車両費と保険料を見直す

社用車を使う企業では、車両費や保険料も固定費削減の対象になります。
例えば、保有台数、走行距離、駐車場代、車検費用、燃料費をまとめて確認すると、利用頻度の低い車両が分かります。

また、業務内容によっては、カーシェアやレンタカーへ切り替えるほうが費用を抑えられるでしょう。
一方で、保険料は補償内容を削りすぎると万が一の負担が大きくなるため、必要な補償を残して見直すことが大切です。

特に、複数台を保有している企業は、契約の一本化で管理の手間も軽減できます。

ペーパーレス化と電子化を進める

ペーパーレス化は、紙代や印刷代だけでなく、保管スペースや郵送費の削減にもつながります。
例えば、請求書、契約書、社内申請を電子化すると、書類を探す時間や承認の待ち時間も短くなるでしょう。
また、紙の管理が減ることで、バックオフィス業務の負担も軽くなります。

一方で、いきなり全てを電子化すると現場が混乱する場合があるため、よく使う書類から順番に切り替えるとよいでしょう。
さらに、電子化のルールを決めておくと、部署ごとの運用差も防ぐことにつながり、検索や共有がしやすくなり、確認作業の時間も短縮できます。

見落としやすいITコストの削減方法

ITコストは、利用部署が分かれていると全体像を把握しにくい固定費です。
また、SaaSやライセンスは契約が増えたまま放置されることもあります。

ここでは、企業が見落としやすいITコストの削減方法を確認していきましょう。

SaaSの利用状況を可視化する

SaaSのコストを削減するには、まず社内で使っているサービスを一覧にすることが重要です。
例えば、契約名、料金、利用部署、利用人数、更新月をまとめると、似た機能のサービスや利用頻度の低いツールが見つかります。

また、個人や部署ごとに契約しているサービスは、経理や情報システム部門が把握できていないこともあります。
そのため、支払い明細と現場への確認を組み合わせて、利用状況を可視化してみてください。
さらに、更新月を記録しておくと、不要な自動更新も防げます。

不要なライセンスや重複契約を整理する

SaaSや業務システムでは、退職者のアカウントや使われていないライセンスが残っている場合があります。
まずは、契約数と実際の利用人数を照らし合わせ、余っている分を見直すことが大切です。

また、同じような機能を持つツールを複数使っているなら、社内で標準化することで費用と管理の手間を抑えられます。
一方で、急に契約を止めると業務に影響することもあるため、利用部署に確認してから整理すると安心です。

特に、更新前のタイミングで確認すれば、余計な支払いを防げます。

固定費削減で失敗しないための注意点

固定費削減は、やり方を間違えると現場の負担やサービス品質の低下を招く場合があります。
しかし、必要な投資を残しながら進めれば、経営改善に役立ちます。

以下では、固定費削減で失敗しないための注意点を確認していきましょう。

従業員の納得感を得ながら進める

固定費削減を進める場合は、従業員への説明が欠かせません。
例えば、残業削減や備品費の見直しだけを一方的に進めると、現場は単なるコストカットと受け取りやすくなります。

また、業務に必要なものまで削られると、効率が下がって不満も出るでしょう。
そのため、会社が何のために固定費を見直すのかを伝え、現場からも改善案を集めることが大切です。

さらに、削減で生まれた余力を業務改善や働きやすさに回す考えを共有できれば、協力も得やすくなります。
また、小さな改善から始めると、現場も変化を受け入れやすくなるでしょう。

事業成長に必要な投資まで削らない

固定費削減では、支出を下げることだけに目を向けないことが大切です。
例えば、採用費、広告費、教育費、システム費用などは、将来の売上や業務改善に関わる投資でもあります。

また、必要な費用まで削ると、短期的には支出が下がっても、後から売上低下や人材不足につながるでしょう。
一方で、成果が見えない費用は見直す必要があります。

費用ごとの目的と効果を確認し、残すものと削るものを分けて考えてみてください。
特に、売上に関わる費用は数字を見ながら慎重に扱うと安心です。

削減後も定期的に効果を見直す

固定費削減は、一度実施して終わりではありません。
例えば、通信プランやSaaS契約は、事業規模や利用人数が変わると適した内容も変わります。

また、削減した費用が本当に利益改善につながっているかを確認しないと、現場の負担だけが増える場合もあるでしょう。
そのため、削減額、業務への影響、従業員の声を定期的に確認することが大切です。

さらに、契約更新の前に見直す習慣を作れば、不要な支払いを防ぐことにつながるでしょう。

まとめ|企業の固定費削減は無理なく継続できる方法で進めよう

企業の固定費削減では、まず固定費と変動費を分け、毎月発生している支出を正しく把握することが重要です。そのうえで、人件費、オフィス賃料、水道光熱費、通信費、車両費、ITコストなどを順番に見直すと、無理のない削減計画を立てやすくなります。

また、従業員の納得感を得ながら進めることで、現場の負担を抑えつつ継続的な改善につなげられるでしょう。

最適なコスト削減と資金繰り改善は「リンクソートコンサルティング」へ

固定費の削減は一見シンプルですが、「どこまで削っても事業が回るのか」の適正ラインを見極めるのは容易ではありません。特に、すでに資金繰りに不安がある、あるいは金融機関への対応に追われている状況では、社内だけの判断でやみくもにコストを削ることは大きなリスクを伴います。

リンクソートコンサルティングでは、単なる帳簿上のコストカットにとどまらず、企業の根本的な事業再生・財務改善を見据えたコスト最適化をご提案しています。

膨らんだ固定費をスリム化し、もう一度会社の収益力を取り戻したい経営者様や担当者様は、ぜひ一度私たちにご相談ください。貴社の経営状況に寄り添い、確実な一歩をサポートいたします。

【コラム著者】

代表取締役 道家 健一

株式会社リンクソートコンサルティング
代表取締役 道家 健一

中小企業の資金繰り・事業再生支援は1,000社以上。
「ホンマでっか!?TV」番組出演、「お金を回収する交渉技術」著書、セミナー・講演の実施など、多数の実績あり。

プロフィール詳細はこちら

略歴

平成12年大手ノンバンク入社
平成15年不動産会社 取締役就任
平成16年道家経営コンサルティング事務所開業
平成17年株式会社フィナンシャルインスティチュートと業務提携
平成19年株式会社フィナンシャルインスティチュート 取締役就任
平成26年株式会社リンクソートコンサルティング設立 代表取締役

資格

事業再生士補、貸金業主任者、日本プレゼン協会プロ講師

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クリスタルシャワー(FMラジオ)

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