被災直後に与信を引締め1億円のキャッシュを作った事例

ご相談の経緯

企業データ

  • O社
  • 資本金:3千万円
  • 年商:10億円
  • 従業員数:25名
  • 業種:建築資材卸売業
  • ご相談時の経営状況:東日本大震災で被災し、本社倒壊、在庫喪失、社員の命までも奪われたが、地域再生のために再び会社が動き出した状態
  • 経営悪化の原因:売掛金の未回収、在庫の喪失、売上増大による運転資金不足
東日本大震災から3ヶ月経った頃、ある会社から、道家に会いたいとご連絡を頂いた。電話を頂いた私は、住所から被災地域であるとわかり、全ての予定に優先して面談することを決めた。ご相談の内容は、販売しても回収できていないことによる、売掛金の増大を食い止めて欲しいということだった。いくら売っても回収できなければ、帳簿上黒字でも倒産してしまう。ご相談に来られた社長は、以前からこの問題に直面していたのだが、良い解決策を見つけられずに悩んでいたという。そこに津波が押し寄せ、本社倒壊、在庫喪失、社員の命までも奪われ、より状況は困難となったのだが、逆にこれを機会と捉え、思い切った改革を進めるためにお声掛け頂いた。

与信管理とは 【代表:道家より】

銀行負債のリスケジュール交渉について

与信管理と債権回収はセット

与信とは、取引相手に信用を与えるという意味。例えば、商品を先に引き渡して、代金を後で払って頂く場合、相手から商品代金を回収するまで、相手を信用して待つことになる。このことを指して『与信』と言う。
そして、このように信用に基づいて発生する、「売掛金」や「受取手形」の管理をしていくことを『与信管理』と言い、具体的な実務として、取引先が倒産する危険性がないかどうかの調査や、その調査に基づき取引するのかしないのかを決める審査、与信限度額の決定(取引するならばいくらまでか)、未入金管理などがある。

この与信管理を厳しくすれば、そもそも未入金すら発生しない。つまり、債権回収、売掛金回収に至るような取引先とは付き合わないことになる。逆に言えば、厳しくやりすぎると売上が落ちる、調査費、管理費などのコストもかさむ。

与信管理に正解はないと言われる。常に社内の現状や戦略と合わせてバランスを取ることが必要であると同時に、最悪の場合の債権回収、売掛金回収にも備えておかねばならない。

与信管理の設計図

解決にあたって重視したポイント

  • 初期のデューデリジェンス
  • 新しい与信管理モデルの構築
  • 社員の意識改革

ご相談から解決までの流れ

  • 1.ご相談
  • 2.ご契約
  • 3.デューデリジェンス(現状把握) ・・・・・・・・・・・・・第1回(1ヶ月目)
  • 4.方針の明確化+組織体制の整備 ・・・・・・・・・・・・・第2回(2ヶ月目)
  • 5.予防策の構築(新与信管理モデルの構築) ・・・・・・・・・第3回~4回(3~4ヶ月目)
  • 6.治療策の実施(個別要因の潰し込み) ・・・・・・・・・・・第5回(5ヶ月目)
  • 7.環境整備(諸要因の修正) ・・・・・・・・・・・・・・・・第6回(6ヶ月目)

問題解決を終えて 【代表:道家より】

問題の根幹

お越しいただい社長は、数年前に会社を引き継がれたばかりの2代目社長。背が高く、がっしりとしていて、声の大きな親分肌。被災したなど到底思わせない、力強さに溢れた方だった。当時、社長は営業面を掌握されていたものの、経理財務関係は、役員であるご両親が取り仕切られており、細かな内容は把握されていなかった。

早速、面談時、約30項目に渡る質問を行い現状を浮き彫りにしていった。その結果、当社は、未入金・未回収(未入金より3ヶ月超経過したもの)、貸倒れが増加しても仕方ない状態であることがわかった。新規取引先と付き合うかどうかの審査は、実質的になし。売掛金の管理は営業マンに任せきり。債権回収は、営業から言われて初めてスタートする、等々、取引の入り口から出口まで、総じて緩い体制であったからだ。

この先代が築き上げた与信管理と債権回収の仕組みを、会社の現状、現在の戦略と連動させて修正し、ご両親から経理財務も合わせて引き継ぐことこそ、今回の本質的な課題であった。

現状分析

数字上、問題点は明確であり、売掛金が多すぎた。損益では継続的に黒字を出されており、問題はない。逆に、復興需要が大きく、震災から3ヶ月にして、既に売上が増加傾向にあった。一方、貸借対照表を見ると、売掛金が月商の3.8ヶ月分もある。通常の社内ルールでは、売って請求してから2ヶ月以内には回収することになっている。とするならば、その倍近くも売掛金があるのはおかしい。

売掛金が多いため、手元に運転資金が必要となり無駄な借入が必要となっている。当社で言えば、売掛金が月商の3.8ヶ月分-本来は2ヶ月分=1.8ヶ月分の売掛金、約1.5億円が余分であった。1.5億円の借入金利が年間約300万円。売掛金をできるだけ小さくして、その回収したお金で借入金を返済すれば、損益もより良くなる。もちろん、他の投資にお金を廻すこともできる。売掛金を管理していくことで、より良い会社に変えていくことができるのだ。社長は、まさにこれを求めていた。

だからこそ、早く売掛金の中身にメスを入れていかねばならない。しかし、津波で財務データの一部を喪失しており、復旧までには時間が必要だった。

そこで、まずは、当社の経営理念、戦略、組織体制、各部の役割と成果、人事評価制度、業務フロー、管理システム、帳票などを確認、分析し、新たな与信管理体制の骨格を作った。そして、同時に社長をトップとする経営改善チームを編成、当チームの当面の業務は、新たな売掛金の管理表を作成するための、財務データ復旧と、個別得意先の現状確認とした。

こうして、全社が新たな与信管理体制の構築に向けて動き出した。

- まず始めに行ったこと

それは、被災現場を見せて頂くことだった。基礎だけになった社長のご自宅跡、津波が直撃し大きく曲がった鉄骨だけの本社跡、そして、元々は建物が密集していたはずなのに、はるか遠くまで何もない海岸沿い、かろうじて残った建物の上に、なぜか乗っている漁船、そして異臭を放つゴミの山。。現地の人々の気持ちを、ほんの少しでも共有してからでなければ、コンサルティングによって何かを変え、成果を出すことなどできないと考えたからだった。

現場を見て、話を聞いて、空気を感じて、そして涙がこみ上げてきた。だからこそ自分なりのゴール設定ができた。当社が存続し成長していくためのコンサルティングであるのだが、ここで成果を出せば、当社の社員の生活が担保される、当社は地域最大手でもあるのだから、多数の取引先も存続することができる、建築資材を扱っているのだから、ひいては地域の復興にもつながる。私の中でこの仕事は、復興支援として明確になった。

新たな与信管理体制

経営改善チーム内での会議の結果、新たな与信管理体制を下図のように定めた。

新たな与信管理体制

改善後の業務フロー図

改善後の業務フロー図

そして、これからの与信管理体制を実現していくため、以下の3点を導入した。

  1. 回収予定表:未入金先を4ランクへ分類した新たな帳票を導入
  2. 基本契約書:これまでなかった基本契約書を作成、基本的な支払条件を30日に設定した
  3. 社内の連携:営業部と間接部門の役割を明確化、会社全体で未入金、未回収へ対応する体制へと変更

-新体制発表会 兼 回収会議

新たな仕組みを稼働させるため、全社員が集まれる会議室を借りて頂き、私が司会進行を行う形式での新体制発表会を実施。スライドや配布資料を使用しながら、「現在、当社が置かれている状況」、「なぜ新たな与信管理体制をつくる必要があるのか」「新たな体制に移行するとどうなるのか」などを1時間に渡り、質疑を受けながら説明。その後、新たな回収予定表に基づく、第一回目の回収会議を始めた。

回収会議の目的とゴールは以下の通り。

目 的 : 未入金、未回収、貸倒れの削減
ゴール : 安心して売上が上げられる状態

この回収会議は、コンサルティング期間中に3回開催した。始めは、そもそも議論自体活発ではなかったし、むしろ管理を強化することへの反発の声も上がってきた。しかし、2回、3回と回を重ねるごとに、建設的な意見交換やアイデアの発表が相次ぐようになり、徐々に成果が上がり始めた。

個別問題点への対応

財務データの復旧も完全に終わり、売掛金の中身が完全に見えるようになった段階で、様々な問題点が浮かび上がってきた。先代からの未回収売掛金、入金日から3ヶ月超の未回収売掛金、さらにはそうした問題先への追加販売などだ。

最後に

こうして、新たな与信管理体制に変更して走り出した当社は、6ヶ月間という短期間で目覚ましい成果を上げた。前期の売掛金総額は月商の3.8ヶ月分であったが、それが2.8ヶ月分へと1ヶ月分下がったのだ。これによる、当社への資金繰り効果は1億円を優に超える。逆に言えば、社長が与信管理の強化に取り組まなければ、売上が対前期比1.5倍へと増加していた中で、運転資金の不足を引き起こしていた可能性すらあった。

当社がこれだけの成果を上げることができたのは、

  1. 基本契約書の締結による支払条件の短縮
  2. 回収予定表の活用による意識の強化
  3. 各部の役割、業務フローを明確にし社内の連携を強化

の3点が主な要因だ。

これを徹底的に行った結果、担当者が入金日を意識するようになり、未入金が抑制され、未回収状態になっていた売掛金が回収された。得意先の支払条件が徐々に短縮されていったことで、売掛金が少なくなった。

未入金、未回収、貸倒れを減らしたいのならば、徹底的にやり続けるしかない。心が折れたらそこで終わりだ。当社は、津波によって大損害を受けるという特殊な状況下にあった。しかし、だからできたというのは違う。こうした状況下でも反対意見は必ず出る。やる人はやるがやらない人はやらない。現に当社もそうであった。

それでも、やる意味を伝え続け、動いてもらわなければ会社は変わらない。どんな状況下でも、何をやるにしても、結局は同じではないだろうか。成果を出す会社は、経営者が不退転の決意で臨んでいる。そこに、効果的なアイデアを注ぎ込み、成果を生むまで、経営者と共に策を打ち続けるのが私たちの仕事だ。

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